コーチに必要な資質とは? #7

最終更新日:2020年2月17日

 谷口コーチに質問する 

コーチングに携わるすべての人へ

── 今日は15年以上にわたってマスターコーチとして活躍されている谷口さんに、成功するコーチの心得、活躍し続けるコーチになるためのヒントについてお伺いしていきたいと思います。

谷口:おお、すごいテーマですね!

── 谷口さんのメルマガの読者の中には、プロのコーチとして活躍されている方や、お仕事でコーチングを活用されている方がらたくさんいらっしゃるんですね。今日はそういう方々がぜひ聞いてみたい!というお話になるんじゃないかなと思います。

コーチの仕事とは何か?

── まず一つ目の質問です。コーチのお仕事ってなんですか?

谷口:すごい質問ですね(笑) まず、少し区別をしていきましょう。コーチの語源って知ってますか?

── ブランドがあって、バッグにもなってますが、馬車ですよね?

谷口:そうそう、馬車ですね。(馬車は)人を目的地に届けるものだよね?だから目的地に届けるものをコーチっていいます。物を届けるということでバックを作ったらしいんですけどね。目的地にその人を届けるのがコーチの仕事です。語源は馬車からきているんですけど、そこから「指導者」っていう言い方にもなっている。だからコーチとは指導者です。スポーツのコーチとかから始まって、アメリカだと大学の教授もコーチ。「指導者」と日本語では訳すんだけど、「指導者」ってどういう人だか知ってる?

── 指導者って先生的なイメージが強いですね。

谷口:でしょ?教える人みたいな感じだよね?でも指導者って指し示して導く人って書くでしょ?教えないよね?僕が思う指導者っていうと、キング牧師とか、ガンジーさんとか南アフリカのマンデラさんとか、民を国民を自分たちの未来や国の在り方を指し示して多くの人を導いているっていうのが一番近いかな?

コーチがやっているのは、そんな大衆とか民をとか国をとかじゃないですけど、目的地に向かって、その目的地に進みたい人を、あなたの目的地はここだよね?って明確に指し示していく、行き先をはっきりさせる。で、ここまでの道のりプロセスもはっきりさせる。どういうふうに通っていくか。そして、導いていく。ある人は伴走とかいう言い方をするんだけど、導いていく。一人で目的地に向かうよりも誰かそこに一緒に歩いていくれる、支援者というか、一緒に歩いてくれる人がいた方が、道に迷ったときに、どっちがいいのかなって思ったときに、「ねえ、どっちがいいと思う?」って、「いや、あっちが目的地なんじゃないの?」なんていうのを二人で話し合いながら行った方が迷わず行きますよね。

前にこの「ザ・コーチTV」で「挫折」の話しましたよね?かならず目的地に向かう時にはトラブルって発生しない?まあ昔は馬車だからタイヤ外れたりとか、馬が逃亡して2頭だったのが1頭になるとか、インディアンにおそわれるとか、順調じゃないわけですよ。それを、クリアしながら目的地に行く。だからコーチの仕事って、目的地を目指している人が、一人で行くよりもコーチという専門家と行った方が、行き先がはっきりするし、道のりがはっきりして地図が明確になるし、途中で遭遇するいろんなトラブルや挫折や障害も専門家がいるわけです。「こうやって乗り越えるんじゃないの?」みたいな。そういう人がいた方が確実により早く目的地に着く。まあ確実に早く届けるのがコーチの仕事。

「コンサルタント」と「コーチ」の違いとは?

谷口:似て非なるものがある。僕たちが仕事にするってことは社会的に報酬をもらって社会的に認知される職業にしてるわけですね。プロフェッショナル・専門家っていうわけなんですけど、似てる職業にコンサルタントってあるでしょ?メンターとか、ティーチャー、カウンセラー、セラピスト、何となく似てるんですけどこれを全部区別しなきゃいけない。例えば、コンサルタントって何だと思う?

── ビジネスのことを教えてくれる人ですか?

谷口:解決策を提案するんですね。なぜかっていうと、コンサルタント会社には膨大なデータがある。だからほかの会社がこうやって上手くいったとか、学術的にはこうやれば解決するとか。システムから膨大なデータを元に解決していく。じゃあメンターって何?

── 先生の中でもより恩師的なイメージが近い感じがします。

谷口:助言者っていうことなんですけれどね。簡単にいうと、自分が行きたい先を先輩として先に歩いてる。だから新人の営業マンだと中堅や先輩営業マンがメンターになる。営業という仕事は経験だから。自分の経験上こういうふうに解決したよって助言をしてあげたりするのがメンター。コンサルタントっておもしろくないですか?経験しなくてもアドバイスできる!

── そうですね。経験と違いますもんねデータは・・・。

谷口:そうそう。だから会社経営してなくても経営コンサルタントってできちゃう。でも経営者のメンターにはなれない。日本でいうと、京セラの稲盛さんなんかはメンターになりますよね。会社を興していろんな物を乗り越えて再生して、若い経営者から見ると経営の先輩になる。だから助言が欲しいからメンターになる。これは行き先をはっきりさせて目的地へ届けるわけではない。コンサルタントも行き先をはっきりさせて目的地まで届けるわけではない。じゃあカウンセラーって?

── 悩みをきいてくれるイメージです。

谷口:そうそう、悩みや心の問題を助言をしながら解決する。これは行き先ないもんね。行き先に届けないですもんね。

セラピストっていうのは投薬や施術や手術。簡単に言うと、医学的な薬とかを用いず治療する。ドッグセラピーとかいいますよね。病院にワンちゃんがいると病気になっている子供とか治りやすくなるでしょ?病気を治したり、ただし、薬とかは使わない。これは行き先をはっきりさせて届ける人じゃない。

行き先を明確にしてそこへ届けるのがコーチ

コーチってそれ以外の似ているものと明らかに違うのは、行き先を明確にしてそこへ届けるのが仕事っていうところかな。だから長い人だと僕なんか、7年も8年も次はここへ行こうっていって、その人がそこへ行きつくまで届けるように支援していく。なんとなくわかるかな?

── コンサルタント、メンター、カウンセラー、セラピスト、って言葉的には同じカテゴリーの職業で捉えられていますけど、1つ1つみると明らかに違うんですね。

谷口:ただ、別に法律でとか資格で綺麗に区別されてるわけじゃないし、カウンセラーはあるのかな?でもコンサルタントは自分でコンサルタントって名乗れば何でもなれちゃうから。ただ、僕はやっぱり専門家だから、自分はコーチなのかセラピストなのかカウンセラーなのかコンサルタントなのかは明確にして、それの専門家として必要な人にサービスを提供したらいいんじゃないかなと思う。

── 行き先をはっきりさせてより早く確実に目的地に届ける、これがコーチのお仕事!わかりました!

谷口:具体的にいうと、それをする専門知識もあれば、スキルもあれば道具も持ってるわけですね。いわゆるアセスメントとかいろいろあるわけです。プロ、専門家としてそういう道具や知識やスキルは常に高めてやっています。

まずいのは、コーチって名乗っていながらやっていることはカウンセラーっぽかったり、カウンセラーと名乗ってながらちょっとコーチっぽかったり、というふうに、やっている方もわからないままごちゃごちゃになってると、あまり上手くいかない。

どうなんですかね?お医者様も全部医学を勉強して最終的に何科へ行くとか決めるらしいですけど、あれいいのかな開業しても内科医が歯を治してもいいのかな?わかんないけど、やっぱりうちの専門性はこれだから、それは歯科に行ってください、外科に行ってください、循環器科に行ってくださいって他を紹介するんだろうね。

僕たちプロのコーチでそれを職業とする人は倫理規定っていうのを背負わないといけないから、専門以外のことはやっちゃいけないと、そういう専門家を紹介しましょうというのが倫理規定なんですね。

── 5年前10年前から比べたらコーチという言葉は一般的になってきたと思いますが、コーチはコンサルタントともセラピストとも違う、目的が違うよっていうのを一つ確認しておく良い機会になりました。

谷口:仕事としてやる場合と、コーチングのノウハウや考え方やスキルを日常に応用するのは別だけどね。

コーチにとって必要な3つの要件とは?

── では引き続いて2つ目の質問ですが、谷口さんご自身の経験や、いろんなコーチ仲間をご覧になって、コーチにとって重要な資質や要素があればぜひ教えてください。

コーチに必要な3つの要件 #1「コーチをつけている」

谷口:まず、僕がコーチングの世界に入った時、先人というか、常にコーチ業界にいる団体や先輩から言われたのは、

1)コーチをつけている

2)コーチをしている

3)学び続けている

3つは絶対必要だって言われたんです。これは絶対条件じゃなくて、要件。例えばね、健康食品をある人が進めてくれたとします。飲んでみてどうだった?って聞きたくなるじゃないですか?これ飲んだらこうなるよって教えてくれたり。「飲んでみてどうだったの?」って聞いて、「いや、僕飲んでないんだけど」って言われて買う?

── いやいや絶対買わないですよ。

谷口:買わないよね!つまり自分がずっとコーチを付けて早く目的地にたどり着いたり、自分が想像していたより高みにたどり着けたりした経験がまず圧倒的にあるっていうことです。だから「コーチを付けている」。中には、プロコーチなのに自分がコーチを付けていた経験のない人もいる。ちょっと怖いでしょ?

── 経験してないのに勧める?って感じですよね。

コーチに必要な3つの要件 #2「コーチをしている」

谷口:次に「コーチをしている」。よくこれもコーチ業界に入る時にコーチが上手くなったからプロコーチをやります、クライアントをコーチしますって思っている人いる。それ上手くならないんですよ。例えばお医者さん。外科医ってメスを使って手術するでしょ?医大に入って、こうやって切る、ここは切っちゃいけない、ここに血管があるって山のように10年も20年も大学でただ勉強していただけの外科医に心臓手術頼む?やっぱり何回も新人の時からメンターに教わりながら、少しずつ少しずつメスを握ったり、どきどきしながら時々出血したってふさいだりした経験を積んで10年きましたっていう人に心臓の手術頼まない?

コーチも一緒で、勉強している時からコーチをしなさいって言われた。実践でしか学べないことっていっぱいある。そうすると、上手くいかないこともいっぱいあるんです。それも踏まえるから、こうするとうまくいかない、こうするとちゃんと届けられるとか、上手くいくという経験値が山のようにあって、だんだんプロフェッショナル、マスターになっていくんです。だからとにかくコーチングを勉強しだしたらすぐコーチをしなさい。

でね、これも間違うのが、コーチングの会話を練習する人がいる。よくコーチングってクライアントとコミュニケーション取るっていう言い方するんですけど、届けるだから、何年もとか何か月もクライアントが目的地に向かって進んでいく間のプロセスを共に過ごしていかないといけない。だって途中で挫折したり、悩んだり落ち込んだり辞めそうになったりするでしょ?

── 馬車でいうと、馬が逃げたり、車輪が取れたり、そういうことですよね?

谷口:そう。それを経験しないでただ会話だけの練習してる人がいる。だから「コーチをする」。コーチ契約をしてずっと目的地まで一緒に届ける経験をいっぱい積むっていうこと。

コーチに必要な3つの要件 #3「学び続けている」

あとは勉強。常にトレーニング、ケーススタディをやったり、技量を磨いたり、ツールをブラッシュアップしたりするのも、やり続ける。それも要件かな。

よく僕言うんです。コーチを付けて自分も目標達成をしたいと思ったら、コーチに「あなたがコーチをつけて得られた最大の目標達成や成果はなんですか?」って必ず聞いて下さい。コーチをつけることがいかに有効かっていう経験をコーチが持っていないと上手くいかないと思うので、その質問を絶対聞いて、自分が頼みたいコーチが、その人もコーチをつけることによって大きな目的や目標を達成した経験があるのかないのかを必ず聞いた方がいいよっていうのが一つ。これが選ぶときのコツ。

コーチに必要な資質とは?

谷口:資質ね。資質は率直・正直・言葉選ばないで言うと冷酷。

── 全然違ったイメージの言葉が出てきました。

谷口:冷酷であり、信念を持っている、信じている。もし手元に紙があったら三角形を描いて、中に線を2本引くと、三角形が3段になるでしょ?一番下に建前レベル、真ん中に思いやりレベル、一番上に正直レベル。正直や率直って一番上なんですね。では、組織でもいい、夫婦でもいい。夫婦間のコミュニケーションが常に建前レベルで続いたらその夫婦どうなると思う?

── それはいつかいろんなところで爆発が起こるんじゃないでしょうか(笑)

谷口:では、もう少しレベルが上がって、その夫婦が思いやりレベルで普段からコミュニケーションを取ってるとしたら?

── 一見うまくいきそうですけれど、ずっとは継続できないですね。

谷口:かも知れないですね、だいぶん良くなりましたけどね。率直・正直が一番上なんですね。だからやっぱり正直に本心で。ただし相手を攻撃するような言い方ではなくて、プロとしての相手に届く言い方で、お互い思ってることや感じてることをちゃんと相手に届ける、っていうレベルだと変わりそうじゃないですか?

組織もそうでしょ?従業員、社長と専務、部長と課長、課長と、お客さんも含めて全部建前レベルでしか会話してない会社。それが思いやりレベルに上がっていって正直レベルになっていく。たぶん正直レベルの方が長期的にはいい関係性になっていくんじゃないかな。

#1「率直で正直であること」

なので、コーチングを勉強していると、建前レベルから思いやりレベルにはいくんです。例えば相手の話をさえぎらずに最後まで聞いてあげる、は思いやりレベルなんですね。ただ相手から伝わってくることで、感じたことを相手のために勇気をもって、もしかしたらリスクを感じるかもしれないけれど伝えた方がいいと思ったら、正直にそれは相手に届けるというところなんで、この思いやりレベルと正直レベルの一線をなかなか越えられないんです。リスクがあるから。嫌われたり

── 恐れみたいなものが出てくる?

谷口:これいうと泣いちゃうかもな~と思っても。よくあるんですよ、コーチングしていると。特に感受性の高い女性なんか涙ぐんだりする時もある。でもそれもリスクを冒してでも届けた方が良ければ届ける、そういうのが率直・正直かな。

── なるほど。

#2「冷静・冷酷・客観的であること」

谷口:あとは「冷酷」。これはそのままの意味でとらないでほしいんだけれど、対義語にするとしたら同情、思いやりどういうことかというと、クライアントさんがダメージを受けたり、悩んだり落ち込んだりするときがあるんですね。日常だと、「大丈夫?」って心配するじゃないですか。「つらいね」とか同情するでしょ。でもコーチって早く目的地に届けたいから、泣いてても同情もせずにただ待ってるんです。「大丈夫?」とか言うよりただ待ってると、結構早く泣き止みますね。だって反応してくれないんだもん、相手が。泣いてる時に「大丈夫~?」って同情してもらいたくなるでしょ?つらい時。だからそれもしない。「冷酷」って簡単に言うと、目的地に届けるのが仕事だから、同情もしないしある意味、早く元の状態に戻って届けるためには、すごい冷静・冷酷・客観的な部分があります。

── 冷静・冷酷・客観的。目的地に届けるっていうのが仕事ですもんね。必要ですね。

#3「信条や信念があること」

谷口:あとは、信念や信条があること例えば、僕がよく思ってるのは、人には無限の可能性があるっていうのが信念。ただうまく出し切れてないだけ、っていうのは信じてた方がよくないですか?

── そういう信念があるって素敵ですね。

谷口:例えば、成功するのはそういう素質がある人とか才能がある人しか無理だって信じてたら、その人がコーチしててもたぶんいかんもんね(笑)そういうところかな~。まずコーチ自身も、まさに目的や目標や夢、ゴールがあって、コーチ自身もそこへ向かってた方がいいと思うし。

#4「エネルギーを高く保つ」

あとは、まあこれは絶対条件じゃないけど、エネルギーを常に高く保っておくのもコーチとしてあった方がいいかな?なぜかというと目的地に向かうにはエネルギーがいるじゃないですか。元気、モチベーションがいりますよね。自分が雇っているコーチがいつも元気がなくてモチベーションが低かったらそっちに引きずられない?

── 引きずられちゃいますよ(笑)

谷口さん:でも、いつも話し相手をしてくれるコーチが、いつもエネルギッシュでいつもモチベーションが高いと、今度はそっちに引きずられるとコーチと話すだけでなんか元気になるとか、コーチと話すだけでなんかモチベーションがもう一回復活してくる。だからそういう状態にしておいた方がいいんじゃないかな。

#5「人生の肩代わりはしない」

あとは、これね、僕先輩コーチに言われたんです。相手の人生を肩代わりしてはいけない。解決してあげよう、何とかしてあげようとするっていうのは相手の人生を肩代わりしようとしてるんですね。なので、目標や目的に向かうのはクライアントさんだから、コーチがやるのは、その目的地に届けることに責任を負う。クライアントの目標が達成されることに責任は負わない。かな~。

#6「相手の成果に依存しない」

まだ思い出した!クライアントの成果に自分の満足度を押し付けない、依存しないイメージ湧きます?

── これはどういうイメージなのかが上手く描けないんですが。

谷口:自分がコーチしているクライアントに成功してほしいがために、自分がコーチしたことでこのクライアントが成功したんですよって、自分のコーチングを証明したいがためにクライアントに関わらない。イメージはね。親子で言うと息子に依存している母親。息子の成績で自分を満たすみたいな。そういうのではない。

だからプロのコーチの中では、相手の成果に依存しない、自分の満足度を満たそうとしないためには、自分自身で常に自分のニーズを満たしておかないと、相手の成功に依存しちゃうケースがあるんですね。だからコーチ自身は常に自分のニーズ、自分の欲求は満たしておかないといけない。そんなところかな~今思い付くところ。

── 今お聞きしただけでも3つといわず4つ5つ教えていただきました。プロのコーチをされている方は、ここでご自身のやっていらっしゃることを振り返って、こういうこともっとできるなっていうのをこの機会に確認されると、先輩の谷口マスターコーチのように長くみなさんのコーチング、目的地に早く確実に届けるお手伝いをして、プロのコーチとしてどんどん活躍されていくので、ぜひ今教えていただいたことをご活用していただけるとうれしいなと思います。

谷口:僕もうれしいです。本当に、上質で優良なプロのコーチが世界中にうんと増えれば世の中だいぶんマシになるんじゃないかな!

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