企業研修コーチとしてステップアップするには? #93
―― 今回は「企業研修コーチとしてステップアップするには?」というテーマで谷口コーチにお話を伺っていきたいと思います。
谷口コーチの現在のビジネスの柱の一つに、企業研修があると思います。ですが、独立された当初は、企業研修ではなくてパーソナルコーチングの方がビジネスの中心だったというふうに伺っています。
谷口コーチはどのようなきっかけで、もしくは、どのような取り組みをされたことで、企業研修を中心としたビジネスへとステップアップを実現されたのでしょうか?
谷口:昔を思い出しますね。僕はどうしたか?っていうことですね。
僕がやったやり方で同じようにステップアップしてる人は結構いますので、一つの事例としてはわりと成功パターンの一つなんじゃないかなと思います。
―― ぜひ伺いたいです。
谷口:まず、僕は何をやったかと言うと、僕は一番最初に、世の中に出る時にやりたかった仕事が学校の先生だったんです。
でも、勉強しないから大学も行かなかったし、もちろん教員免許も持ってないので、学校の先生にはなってないんです。
でも、根っこには、何かやっぱり人に、一緒に学びたい、物事を教えたいっていうことがあったんですよね。
目次
「人に教える」ということを真剣に考え工夫する
谷口:仕事に就くと、マネージャーになったり、先輩になると、人に教えるということをやりますよね。教育とか。多分ほとんどのビジネスではあるんじゃないでしょうか。先輩になったら後輩や新人を教える。
僕の場合、「すかいらーく」にいた時だったらアルバイトを教える、ですね。
僕は(人を教えることが)好きだったので、教える時にすごく工夫をしました。
こうしたら覚えるんじゃないかな?ああしたら覚えるんじゃないかな?こう言ったらよりいいんじゃないかな?というのをやってた。
だからまず、とにかく今コーチやってる人や会社に勤めてる人も、「教える」ということを、いろいろ真剣に考えたり工夫したり実績を積むのをまずお勧めします。
思い出すなぁ。僕が「すかいらーく」にいたのは20代の時なんですけど、とにかく教えるのが仕事なんですよ。新人、アルバイトが入ってくるとすぐ覚えてもらわなきゃいけないから。
だから、キッチンのことを教えたりするときに、もう30年ぐらい前ですから、昔はキッチンでも菜箸を使うんですよね。長いお箸で盛り付けするけど、下手なの、みんなお箸が。
どうやったら覚えるかなと考えて、新人やアルバイト同士で、氷を菜箸でこっちのお皿からこっちのお皿に何個、誰が一番早く移動するか、というゲームにしました。
こうやって遊びに変えたりとか、すごく工夫してました。こうやったら覚えるかな?って。
で、今度は住宅のセールスの時に、やっぱり中堅になると新人セールスマンの教育係とかになりますよね。
この時も工夫しました。こうしたらいいかな、ああしたらいいかな、やって見せたらいいかなと。
だから、とにかくまずそういうのを普段からやっていく。まず今の時点でやれる場面はいっぱいありますから、やっていくといいでしょう。それが一つです。
セミナーを自分で主催し 人と接点を持つ
谷口:次にコーチになった時に何をやったかというと、いろんなことをやったんですけど、まず「自分でセミナーを主催」はできるんですね。
研修というのは依頼を受けて登壇する、ですけど、自分で主催は出来ます。
なので、何をやったかと言うと、パパママコミュニケーションだったかな?パパママコーチング講座みたいなのを自分でやりました。
会場は、公会堂みたいな安い公共の施設を借りて、チラシを文化センターとかに置いてもらったり、市の広報に載せるというのもあったし、
あとは、カルチャーセンターって結構講師募集するんですね。
そういうとこの門を叩いたら「あぁ、やってみましょう!」みたいになりました。自分で主催する。
その中には練習もあったんですけど、僕はこう考えたんです。「パパママって、パパママじゃないよな。」と。
共働きしてると、「会社員」とかっていう顔もありますよね。ということは、パパママが「これは良いな!」って思うと、会社でも採用するんじゃないかって。
そう考えて、パパママの先に会社があるぞ!みたいに。こういうふうにして、どんな形でも人と接点を持って、自分が登壇してることを見てもらう。
だから、年間100回やろうと思いました。そういう無茶をするのが仲間にいたんです。「じゃあ俺もやる!」みたいなね。
だから、接点を持ってくれば、いろんな人は一つの顔じゃないってことです。
パパやママはパパやママだけど、会社に行ったら課長かも知れないし、リーダーかも知れないし、下手すると経営者かも知れないですよね。パパだけど経営者みたいに。
だから、とにかく接点を持てば、どこかで会社に繋がっていくんじゃないかって。そんなことを思ってたのと、
あとはステークホルダーっていますね。
例えば、会社で言うとオーナーだったり経営者だったり。そういう人たちがいるコミュニティーに参加しようと思ったんです。
経営者が集まるコミュニティに参加する
谷口:経営者の同友会だとか勉強会だとかに行って参加するんですけど、ただ行っただけじゃダメなんですよ。そこで認知されるっていうかね。
どういうことかと言うと、そういうところでも、懇親会があったりグループの勉強会があったりグループワークがあったりするんですね。
休憩時間にいろんなおしゃべりをしますよね。研修なので、売らなくていいんですよ。
その時に僕は、コミュニケーションの取り方や振る舞い方をコーチでずっといるようにしたんですよ。
そういう人(コーチ)がそのコミュニティに当時はいないわけです。そうすると、「谷口さんとの話はなんかいいね!」となるわけです。何となくわかります?
無意識で質問したりコーチしてると、「何かいいね!」ってなるんです。「何してるの?あなた?」となるわけですよ。「いや実はこういうことやってまして…」となる。
例えば、こういうふうに広がって行ったんです。
あるコミュニティに入っていたら、そこに来た人は違う支部の理事だったんです。たまたまこっちの支部に来ていて、やっていたらその人がこっちに来て
「谷口さんうちの太田支部でこの勉強会やってくれない?」と言われて「喜んで!」と。
だから、どこにでもチャンスがあるんですよ。そういうコミュニティには。
ただ、多くの人は居るだけなんですよ。そうではなくて、そこでどのように振る舞うか、なんです。
だから、何か依頼があったら僕は手を挙げる。グループの中でも「あぁ、じゃあリーダーやりましょうか?」とか「ファシリテーションやりますよ!」とか、
例えば「誰かリーダーいませんか?」って困ってたら「僕がやりますよ、リーダー!」とか、そういうふうに振る舞うわけですよ。
例えば、勉強会に来て、誰か偉い先生が来て講座があったりする。そこで、経営者たちが勉強してますよね。「質問は?」と聞かれる。
そこで「ちょっと質問良いですか?」と言って僕が手を挙げて質問すると、僕の質問ってポジティブな質問しかしないから、みんなは僕の質問が、普通の今までに手を挙げて質問する人と違うと感じるわけですよ。
だから、そういうコミュニティでいろんな場面やチャンスがあったら、どういう振る舞いやたたずまいや言動するかに全力を尽くすみたいな。
そうすると、今言ったように「谷口さん、ちょっとうちの支部で」とか、「谷口さん、うちの何とかで」というのは、目の前にいる人はいろんな立場を持ってるんですね。
ある協会の事務方だったり、ある会社の取締役だったり、ある遊び仲間の幹事だったりとか。このように、ずーっと何となく広がっていくのもあります。これが一つですね。
あとは、かばん持ち。
「かばん持ち」として研修に同行する
谷口:どういうことかと言うと、その時すでに僕がなりたい仕事をしてる人がいるじゃないですか。僕にもコーチなりたての時にいました。
もう既に研修講師をやってたり、研修会社を持ってた人。ただその人たちもコーチを勉強してるんですね。
すると、「うちの研修見学したい人いる?」「はいはいはい!もう何でもお手伝いしますから、自由に使ってください!何時に行けば良いんですか?」と言ってかばん持ちをしに行く。
すると、前に立っている講師は、アシスタントやったりとか、手伝ったりとか、資料配ったりとか、その振る舞いも見てるんですよ。
みんなアシスタントって勉強しに行こうと思ってるんですよ。
イメージは落語の弟子です。勉強しようと思ってるのもそうだけど、師匠がいたら、師匠がより輝くようにあれしたりこれしたり。
あと、ちょっと違うかもしれないけど織田信長と秀吉、草履を温めておくみたいな感じ。そうすると、「お前いいやつだな」ってなるじゃないですか。
そしたら、「今度うちの研修があるんだけど、冒頭のやつやってみるか?」みたいになるわけですよ。
落語の師匠と弟子だったら、「今度地方公演があって、お前前座やってみる?」みたいな。
大きな仕事は任せられないけど、これ位だったらお前でもいいかな、みたいなってあるじゃないですか。そういうのがポロっと来たりするんです。だからかばん持ち。
実際、僕もありました。ずっと行ってたら、
「谷口さん、今度こういう研修があるんだけど、できる?」っていうから、「もちろん!」できなくてもできるしか言わないです。
「できます!」「じゃあやってみる?」となると、もう全力でやるんですね。
その人は「まぁまぁどうだろうな?」って思いながらチャンスをくれたけど、思いの外よかったら「じゃあ次は」となるじゃないですか。そういうのもやりました。
普段の振る舞いがチャンスを呼ぶ
谷口:あとは、すごくいいのはどんな場面でも全力でコーチできる。
僕すごく覚えてるのが、コーチ仲間の人が出版記念パーティーをやったんですね。そこにはいろんな人が集まってくる。業界から出版からいろんなつながりで来ていて、もちろんコーチ仲間もいっぱいいる。
みんなお喋り好きなんですよ。立食ビュッフェだから、あっち行っちゃしゃべり、こっちに行っちゃしゃべりしていて。
そうしていると司会の人が「じゃあ今から著者の○○さんがご挨拶します。」と言って、その人が出てきてしゃべり出す。でも、みんなおしゃべりが止まんないんですね。
そこで、僕はそれを中断して、前に一歩出て、「へー、そうだったんだ。なるほどね。」と言って全身で聞いたんですよ。みんなおしゃべりしてザワザワしている時に。
そしたら、僕のその態度を別のところで見ている人がいて、その人が隣の人に「あの人誰?」って聞いたんです。聞かれた人が僕の知り合いだったんですね。
「あの人は谷口さんっていうコーチやっている人」「へぇ~今度紹介してくれない?」って言ったのが研修会社の社長さんだったんです。
―― へぇ~!
谷口:だから、そういう人たちっていうのは、いつも人を見てるんですね。だから売りに行ったから売れるんじゃなくて、普段の振る舞いが全部売り。
僕は、一歩出たら公の人だと思っていて、お天道様が見てるし、誰から見ても恥ずかしくないし、チャンスを持っている人がこのチャンスを誰にあげようかな?って人を探してる時にパッと思い当たる人でいつもいようと思えば、まず最初のチャンスとか結構来る。
だから、SNSとかすっごい大事ですよ。無意識で投稿とかしてたら、みんな見てますからね。
だから、少しでも誹謗中傷のコメントとかを書いてたらもう、チャンスを持っている人はその人にはチャンスをくれないし。そういうところからかなぁ。
そして、もらったチャンスをもう全力で活かす。それこそ初めて高座に上れる落語の弟子が、もう死に物狂いでやる。
でも、うまく行かないんです。でも、そういうことをやってたら段々段々上っていくかなぁ。
―― すごく参考になりました。ありがとうございます。