相手が喜んで自ら動き出す!プロコーチの魔法のレッスン #99

最終更新日:2022年12月22日

―― 今日は「プロコーチの魔法のレッスン」というテーマで、谷口コーチにお話を伺っていきたいと思います。

この「魔法のレッスン」という言葉を使ったのも、先日、谷口コーチのセミナーで伺ったお話が私にとって衝撃的だったので・・・。

谷口:お!稲妻が落ちたぐらい?

―― はい、稲妻が落ちたました。ぜひこれは、ザ・コーチTVの視聴者の皆さんにもご紹介したいと思ってテーマとして取り上げさせていただきました。

その話を聞いて私は、谷口コーチの企業研修やセミナーの満足度がすごく高いというのが腑に落ちたといいますか、1日の企業研修を谷口コーチはすごく高い単価で受けられていると思うのですが、それでも依頼が全然絶えない、その秘密の片鱗を垣間見ることができたと思いました。

谷口コーチの指導法、レッスン法は、全てのスポーツのコーチや監督、レッスンプロ、学校の先生、会社のリーダー層やコンサルタントなど、人に何かを教えたり指導したりする全ての人が、身に付けるべきじゃないかと感じたんですね。

それぐらい私にとって衝撃的なレッスン方法、指導方法だったんですが、セミナーで聞いた内容の全体像をお話しいただくと、きっと何日分のセミナーになるような濃い内容だと思うのですが、ザ・コーチTVの視聴者の方のために、10分程でその概略をお教えいただくことは可能でしょうか?

谷口:10分ね。わかりました。頑張って10分でいきましょう。

今、話してもらった内容に、いくつかキーワードがあるんですけど、まず「学習」ってありますね。「学習を促す」っていうのがコーチの仕事の一つです。

どういうことかと言うと、目標を活用して、学習を促して、成長していくプロセスなんですね。

人間って目標があった方が、(それを)目指していろんなスキルや能力を備えますよね。それが学習なんです。

では「学習」って何?

学習とは?

―― 学習。学び、習うこと?

谷口:その通り、その通り。学び、習う。学びっていうのは真似るですね。そして習得する。もっとわかりやすく言うと、「あーわかる!」が学び、「できる!」が学習

ということは、学習の前提は、ビフォーは「できない」です。アフターは「できる」です。

実はこれって人間だけじゃなくて動物の世界でみんなやってます。

じゃあ鳥でいきましょうか。親鳥が卵を産みました。ヒナが孵りました。飛べる?

―― 飛べないです。

谷口:うん。でも、鳥って飛べないと死んじゃうでしょ?逃げられないし、餌は捕れないし。ということはヒナにとって、「飛べない」が「飛べる」になるのは死活問題というか生存問題ですよね。

ひな鳥は餌をもらうんですけど、一番最初に学習するのは飛ぶこと。どういうことをやるかと言うと、親が飛んでるところを見てるわけですよ。「ほう、こうするんだ」みたいに。

そのうち巣の中で、動き始める。そのうち筋肉が付いてきて、はねを広げられるようになって、どんどん羽をバサバサバサってするようになってきて、そのうち「チャレンジ!」って飛び出して下に落ちて、またそこから這い上がって、そして気が付いたら飛べる、みたいになるじゃないですか。

これを学習っていうので、動物もあるし人間にもあるんですね。

では、次です。僕たちの世界に「気づく」という言葉があります。気づくってどんな意味だと思う?

「気づく」とは?

―― 気づくという意味・・・。

谷口:(笑)ってなるでしょ?「気づく」とは、そもそもあったんだけど、そこにそれがあったってことを見失っていて、「あ、あった!それだ!」っていうのが「気づく」っていうことです。ないものを発見するのは「ひらめく」といいます。

ないものを見つけるのは気づくとは言わないですね。

だから、気づくっていうのは、「ある」ことがあって、そこに意識が向いてなくて「ない」という風になっている状態。

「あ、あったじゃん!」なんていうのは気づくですね。大体僕たちこういうことやってるんです。「学習」と「気づく」を紹介しました。

じゃあ、僕は何をやってるかと言うと、教えてるんじゃなくて、指導っていった方が良いかなぁ。

企業研修に行っても、いろんなセミナーをやっても、簡単に言うと学習のプロセスを作ってるんですね。前提は、できないができる。

もう一つが、わからないとか知らないことに気づいて、こうすればいいんだっていうことがわかって、繰り返してできるようになる。

じゃあね、コーチング勉強する人、最初コーチングできる?

―― できないです。

谷口:できないからスタートするんですよね。アフターは「できる」でしょ?レベルが違いますけどね。どのようにできるか。そういうことやってるわけです。

もう少しわかりやすいのでいこうかな。

新任マネージャー、課長になったばかりの人、すごく効果的なマネジメントできる?

―― できないです。

谷口:熟達のマネージャーと比べるとできないですよね。なので研修で、レベル1ぐらいのマネジメントができる、が目的ですね。

じゃあ、クッキングスクールに行く定年を迎えた男性、お料理できる?

―― 普段やってなかったら全然できないと思います。

谷口:ご飯も炊けないかも知れないですよね。あんな簡単なのに。それが、自分でおつまみが作れる。

じゃあドライビングスクールに入校する人、運転できる?

―― いやー、初めはできないですね。

谷口:できないですよね。卒業の時には、ビビりながらも公道を走れる。というように、みんな学習なんですよ。

僕はコーチをやってるので、教えるのではなくて「学習を促す」なんですね。

コーチは教えない!学習を促す!

谷口:教えるんじゃない。例えば、マネージメントってこうですよってレクチャーをしたら、一瞬にして新人マネージャーは効果的なマネジメントができる?

―― そうですね。レクチャー、教えてもうらうと・・・。

谷口:ね。じゃあ、定年迎えた男性に「料理とはこうやればいいんです。」って教えたらできる?

―― できそうにないですね。

谷口:じゃあ、ドライビングスクールに入校した人に、ただレクチャーだけをする。これはこうで、エンジンはこうで、車ってこうやって動いてて、交通規則はこうで、Rとはバックで、ドライブは進むって全部教えたらできる?

―― できないですね。

谷口:できないですよね?ということは、レクチャーでは学習は起きないということです。

でも、往々にして世の中でうまくいってないのはレクチャーしてる。

―― そうですね。ほとんどがレクチャーしてると思いますね。

谷口:YouTubeなんかレクチャーだらけですよね。だからYouTubeをいくら見てもゴルフってうまくならないんですよ。みんなYouTube見てるんですもん。

なので、学習ってどうやって起きるかっていうことをまず知らないとダメですよね。

学習はどうやって起きるのか?を知る

谷口:今いくつか言いました。

学習なんだと。モノを覚えるではない、頭で記憶するでもない。学習っていうのは、できないことができるようになるってことなんです。

気づくっていうのは、見失ってるものを見つけることです。

ここまで行きましたね。

では、学習を促すことは何をやってるかっていうと、調べてもらえばいいと思うのですが、学習の4段階みたいなのを検索すると、一番下が無意識的無能ってあるんです。

意識に上がってない「できない」

もう一度繰り返しますけど、一番下が無意識的無能、2段目が意識的無能、3番目が意識的有能、4番目が無意識的有能。

では、アフターから行きますね。スポーツの選手の、意識をしないのにすごくできるっていうことを表した言葉なんですけど、わかります?よく試合後とかに「全く覚えてないんですよ」って言う。

―― 「ゾーンに入る」とかですか?

谷口:そう、その言葉です。ゾーンは意識が全くないんです。考えてないのにすごくできるっていうことです。これが最上位の、ものができる。

たぶん、タクシーの運転手ってあんまり「いや、ここでバックにいれて」とか、「ここ右確認して左右指差し」ってやってないですよね。無意識的有能でしょ?

僕料理やってたんですけど、一流のプロって手元見なくても、みじん切り、千切りできますよ。

―― すごいですね。

谷口:だから一番上の無意識的有能っていうのは、考えないでも体が勝手に動く。それもすごくレベルの高い動作ができるっていうことです。

では下から行きます。

無意識的無能っていうのは、それを知らないということ、できないということにさえ気づいていてない。自分は上手くなりたいっていうけれど、知らなきゃいけないことにさえそれも知らない、気づいていない。

意識的無能っていうのは、これを知らなきゃいけないんだ、これを理解しなきゃいけないんだ、これがわからなかったからできないんだっていうのがわかる、ですね。

次、意識的有能っていうのは、これをこうする、あれをこうするって、一旦考えればぎこちないけれどできるようになるんです。だからみんなできるようになる時にはこういう経験してません?

まず、この段階を全部経ないと早く上手くならないと思う。なのに世の中のレクチャーって、これはこうするんですよっていうのから入るんです。無意識的無能が抜けてるんですよ。

無意識的無能がないんですよ。僕はコーチする時、このような質問をよくします。コーチングって気づくって言いますよね?どういうこと?

これが無意識的無能にアクセスしてるんですよ。

無意識的無能にアクセスするには?

谷口:「あ、わかってない」ってことは、「気づく」が次動詞で「促す」っていうことは、「気づきを促す」が使ってるけどわかってないんですよ。わかってないとできないと思いますよ。

―― 確かに。わかってないところにレクチャーをされても入ってこないってことですね。

谷口:そう。それが一つですね。

じゃあ「気づきを促しましょう」がわかったから、気づくとはそもそもあったものを見失っててそれを再発見すること、と言って促す。

だったら質問で、「これまでの経験で今回のテーマに活かせるような経験や体験はないですか?」って聞くと、「あった!」ってなる。

あったわけですよ。でも気づいてなかっただけ。見失ってたから。それを質問によって促してるわけです。

というように、組み立てられるじゃないですか。

これがマスターコーチになると、いちいちそういうこと考えてないってことですよ。この人は無意識的無能、気づいてないなってことも、マスターコーチは考えずにスッと気づきを促す質問ができるっていうことです。この段階がわかってるからです。

だから、マネージャーにマネジメント研修で一番する質問が面白いです。

―― どんな質問なんですか?

谷口:「マネージメントって何ですか?」「え?」ってなりますよ。よーく使ってるのに。

「管理です。」って。「じゃあ管理と監視と監督の違いって何ですか?」って聞く。それがわからないとできないってことですね。

そうすると「え?」使ってるのに答えられない・・・。

これが、無意識的無能から意識的無能に一段階あげるんです。じゃあ「管理とは?」っていったら、聞く耳持ちません?「マネージメントとは?」一旦それを入れると。

「マネージメント何ですか?」って聞いてから「あ、言語化できない」「あ、わかってないんだ俺」ってなってから、「じゃあマネジメントですけど・・・」って僕が説明すると、聞こうとするわけです。

それを、「新たにマネージャーになった皆さんにマネージメントをご説明します。マネージメントとは?」って聞いてないですよ。自分がマネージメントっていうことを理解してないっていうことに気づいてなくて。思い込んでるわけです、わかってるって。

僕がやってるのは、ほとんどの人がやらない、一番下。これが結構重要なんです。

無意識的無能なんですよ。ここを明らかにしてから上に上がっていくから、たぶん、みんな納得度が高いし、インプット、吸収しようとするし、やってみようと思うから、学習が他のコーチや他の講師よりも圧倒的に速く促されるんだと思うなぁ。これで解説になったかな。

―― なりました。すごく衝撃的だったんです。そう考えたら世の中のほとんどは、無意識的無能にアクセスせずに、気づくことをしてもらえずにどんどん進んでいくなと思って。

谷口:そうそう。ゴルフのYouTubeなんか、ほとんど、意識的無能と意識的有能のあたりを行ったり来たりしてるんですけど、例えば僕はゴルフ大好きだから、ゴルフでスコア100を切りたいなんているじゃないですか。

なかなか100を切れない人がラウンド中考えてることと、簡単に80台で回る人がラウンド中考えてることの違いって何ですか?って。これに答えられたら多分100切り近くなるんですよ。

ね?そういうの質問しているユーチューバーっていないよね?

―― いないですよね。やっぱりそう考えると、質問の使い方、谷口コーチが質問を使う構造と言いますか、シチュエーションと言いますか、すべて体系立てられてるんだろうなぁっていうのをすごく感じて。無意識的無能にアクセスする質問とかいうものをきっと持たれてるんだろうなぁって思いました。

谷口:多分僕、一番多いと思いますよ、無意識的無能を意識的無能にワンランク上げる質問っていうのをヤマのようにしていると思う。

セミナーでも、Zoomとかの講演でも、講座でも、研修でもかな。多分そこをやって。コーチってそれが仕事なのに。

でも言われてみれば、こういうこと教えてる人いないなって思います。

―― いないですね。全てそこを飛ばして教える、情報がただ、教えられるみたいな形で。確かにそれだと入ってこないなっていうが大発見でした。

谷口:でしょ?だってスポーツの指導なんか、これがないですよね。

パスで、「パスが上手くなるためには、パスを受ける前に周りをよく見なさい。」で、子どもは「わかりました!」って言ってやってるでしょ?

それよりも、「パスの上手い人って誰?」って聞いたら「メッシ」って答えるじゃん。

「じゃあメッシはパスをもらう前どこ見てると思う?」って聞いた方が良いよね。

「え?どこ見てるんだろう?」「メッシはね・・・」ってそれから教えた方が良いよね。

だから、まず一番下を質問すると、さっき言ったように、『わからないことがわからなかった状態』が、⇒『わからなかったこと、わからなければいけないことが何か?がわかる』っていう、

このステップをどれだけ丁寧にやるかによって、インプットしたいことがあるんですよね。とにかく入るのが全然違うんです。

これを僕たちの世界ではレセプターが開くって言うんですけど、受容体のことを言います。アンテナが閉じてるのがパッと開くことをレセプターが開くっていう。

頭の中で「あぁ、わかるわかる」って思ってると閉じるんです。

で、「マネジメントってどういうことですか?」「え?わからない!」開いた。「だったら」って言えばいい。

こんな感じ。頭の中でパッとアンテナが開くっていう感じ。それを省略してインプット・インプット・インストールしようとするから全然入んないんだと思う。っていうことで、これが答えになってますでしょうか?

―― すごく!きっとみなさんにも伝わっていると思います。

谷口:これだけでもセミナーできるね。

―― ぜひ皆さんにも伝わったらうれしいなと思っております。ありがとうございます。

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