初心者にもできる「質問力」を磨く方法とは? #34

最終更新日:2021年2月9日

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谷口コーチに質問する

── 今日は約17年に渡ってマスターコーチとして活躍されている谷口さんに、「活躍し続けるコーチになるためのヒント」についてお伺いしていきたいと思います。

今日お伺いするテーマは、「質問」についてです。

谷口:ど真ん中をついてくるね!

── 谷口さんは常々、「質問の質は、思考の質に直結する」って言われてますよね?

コーチという職業にかかわらず、「質問力」を身に付けることは、あるゆる人にとって、より良いコミュニケーション、より良い人間関係を築く上でとても重要なことだと思います。

そこで、質問のプロでもあるマスターコーチの谷口さんに教えていただきたいんです。

ズバリ、「私たち初心者にもできる『質問力』を磨く方法」についてアドバイスをいただけますか?

谷口:いいですね!方法は無限にいくらでもあるんですけど、よく僕はトレーニングとか企業様での企業研修で、コミュニケーションとかコーチングの研修をする時があるので、その時にお話ししていることを少しお伝えしようと思います。

まず、物事が上達するためには、4つのレベルがあるとよく言ってるんですね。

上達過程における4つのレベルとは?

谷口:まず最初が

1.無意識的無能

自分が知らない、わからないということさえ気づいていない。

次に

2.意識的無能

これがわからないんだとか、これができないんだというのが分かる。ここで言うと、「質問力が大事だ」ということについて、今までそんなに考えてなかったけど、これを磨かないといけないということが分かった、というのが意識的無能。

次に

3.意識的有能

こうやってこうやれば、こうできるんだっていうのが分かる。ただそれを一生懸命考えて、やっとなんとかできる。

スポーツもそうでしょ?ゴルフでも、最初に「グリップはこうです。スタンスはこうです。」って教わったら、「あ、グリップはこうなんだ。スタンスはこうなんだ。」って1個ずつ考えながらやると、意識はしてるでしょ?こうやるんだって。やってみてまだ上手くないな、でも前よりはちょっとできるようになる。

3つ目が意識的有能。それをずっとやり続けると、無意識的有能になる。

4.無意識的有能

考えなくても体が勝手に動く。「達人」っていうのは全員こうなんです。体が勝手に動いちゃうとか考えなくてもできちゃうとか。

コーチングでいうと、マスターレベルっていうのは考えないでできてるんです。

テストでいうと、国際コーチ連盟の初級とか中級のプロフェッショナルは、意識的有能で受かる。コーチングがこう質問するんだっていうのを1個1個考えながら、ぎこちなくてもその通りにやっていれば受かっちゃう。

でも、マスターレベルって、無意識的有能レベルなんです。ということは聞いている人からしてみると、日常会話と変わらないように聞こえるんです。

何千時間もやっていると、いちいち考えてなくて、まあ流れるようにって言ったらいいのかな?それがマスターの合格基準なんです。

だから4つあるんですね。

そうすると、質問が大事だと分かったというのは、意識的無能の入り口に立ったわけです。

あとは、これから磨いていく。そうすると、意識的有能の3番目に上がるには、「質問って何?」っていうことにまず答えられるというか、「質問ってこういうことです。まだ上手くないですけど。」っていうレベルを目指した方が良い。

なので、「質問ってこういうものですよ」っていうことをよくやります。

初級編 #1 「質問」を構成しているものとは?

谷口:企業研修でもお伝えするんですけど、まず「質問」って「疑問詞」からできてますよね?5W1Hみたいに。これと「視点」、あとは「動詞」、これで構成しているっていうことがまずわかる。

「質問は何ででき上がっているか?」まずそれができる。

「疑問詞」ってありますよね?5W1Hって、Wが5つでHが1つあるんだけど、日本語でも英語でもいいので、何か分かりますか?

5Wは「What=何?」「Why=なぜ?」「Who=誰?」「Which=どちら?」、あとは「Where=どこ?」「When=いつ?」これで6こある。「Whose」とか「Whom」とかいれるとまだ増える。

Hは「How」でしょ?あとは、「How much」とか「How long」とか、量や長さを聞くのもある。これらでできているということです。

これも2つのグループに分かれる。「What」「Why」「How」とそれ以外のものににわかれるんです。

「What」「Why」「How」、その他が「where」「when」「which」「who」「whose」「Whom」とか、別グループなんですね。

#2 疑問詞がどういう働きをするのかを知る

谷口:どっちを聞くかによって人間の頭の中がどうなるかわかります?

例えば、「What」「Why」「How」を聞いた時と、「Which」「Which」「When」「Whose」「Whom」とかを聞いた時で、頭の中の動き方が違うんです。

── 「When」とか「which」の質問は答えやすいですね。

谷口:答えやすいですよね?どういうことかというと、前者の「What」「Why」「How」を聞くと、考え出すんです。

「When」「Which」「Where」だと(答えを)探し出すんです。

だから、「思考」と「検索」の違いなんです。

というふうに、「質問」ってどういう疑問詞がどういう働きかたをするかっていうのが分かると(質問が)理解できます。

#3 「視点」「動詞」をリスト化する

谷口:次に「視点」というのがあって、「視点」というのは意識を向けているところ、目・視線を向けている先っていう意味なんですね。

僕だと、今このカメラに視点が向いてる、だから後ろには向いてないってことですね。こういうのを視点っていう。

あとは、物を見る立場のことを視点っていう。僕から見ている、ここの立場が視点の一つ。でも視聴者から僕はどう見られているんだろう?と思ったら、視点が移動する。

あと、例えば夫婦で話してると、子どもから見たら僕達はどう見えてるんだろうというと、子どもに移動する。このように物を見ている対象と、見ている場所のことを「視点」っていうんです。

次に「動詞」ですね。作るとか、やるとか、見つけるとか、理解するとか、これがくっついて「質問」はできているんです。まずそれが分かる。

次に、今度はその材料集めをすればいいじゃないですか?

#4 それぞれの材料を集めて組み合わせる

谷口:疑問詞集めましたよね?7W、8W。今度は「視点」のリストを僕たち持ってるんです。

例えば、目標とか、目的とか、ビジョンとか、リソースとか、選択肢とか、モチベーションとか、エネルギーとか、現在地とか、到達点とか、確率とか、いろいろあるんです。これが「視点」。簡単に言うと、名詞だと思ったら良い。

あとは、試すとか、理解するとか、探すとか、見つけるとか、やってみるとか「動詞」の単語ってあるじゃないですか?

この材料集まったら、どれとどれを組み合わせる?っていうと疑問文ができるんです。こういう練習を最初にすると「質問力」が磨けると思う。

だから、質問って何でできているっていうのを、あとは組み合わせるんですね。

例えば、「何があったらゴールまでの到達確率が上がりますか?」っていうときありますよね?

何=whatでしょ?ゴールまでの到達確率が名詞=視点でしょ?上がります=動詞。これをただ組み合わせてるだけなんです。

上級編:疑問詞の位置を変える

谷口:次に、これ上級編ね。疑問詞の位置を変えると変わって来るんですよ

「何があったらゴールまでの到達率が上がりますか?」と、「到達確率をあげるためには何が必要ですか?」。「何」が後ろに行きましたね。これによって質問の効果が変わる。

── 聞き手の方の捉え方も変わりましたね。

谷口:簡単に言うと、初級編は質問っていうのは何で構成されている、疑問詞には種類がある、どの疑問詞をくっつけるかによって頭の中が変わって来る。

それが分かったら、その疑問詞に「視点」。視点もリスト化するといいですね。

で、その視点と「動詞」。見つかるとか、理解できるとか、進むとか、試せるとか、達成するとか、これも動詞のリスト、あとはそれの順列、組み合わせる。そしたら無限に(質問が)できる。

それができて、良い質問か悪い質問かっていうと、今度は質問された人に効果があればいい質問、効果が無ければ悪い質問ってわかってくるね。

だから、僕たちは「効果的な質問」なんていう言い方をします。

それを何回もやって、作って、問いかけてみて、効果があった?無い?っていうのを僕たちは何千時間も検証してるので、体に中にエビデンスができ上がってくる。これはヒットする、これはヒットしないって。

── データが蓄積されていくんですね。

谷口:そうやって作っていく。だから初級編で言うと、とにかくその疑問詞の種類、視点=名詞の種類、あと動詞の組み合わせをいっぱいしてみて、自分で質問文をいっぱい作ってみる。

あとは、結構いろんなところに落ちてるんですよ、質問文って。

いろんな場面で見つけた質問文もストックしていく

谷口:本を読むと、質問文って結構書いてあるんです。

「この質問文いいな!」って思ったら、僕はカードホルダーに(その質問文を書いた)カードを入れて、その質問文をパクっていくんです。疑問文だけ抜き出すんです。そうすると、ストックになるでしょ?

落ちているって言ったらいけないけど、本の中にもあるし、講演会聞きに行ってもあるし、コーチのトレーニング行っても、人がしてる質問文だけパクっていくんです。そうするとストックも増えるし。そうやって磨いていくのをお勧めします。

── お話をお聞きするまでは、「質問力を磨く方法」とは、もっと漠然としたものなのかな?と思っていました。ですが今回、細かいパーツで構成されている要素をしっかり確認していこう、という観点でお話いただいたので、そこから紐解いていくと、「質問」というものがどういうものなのかが分かるようになってきて、このお話を聞く前と聞いた後では「質問力」という言葉に対するイメージも変わりました。

有効な疑問文をベストチョイスできるようトレーニングを重ねよう!

谷口:まず、疑問文が作れるっていうのと、次に「質問力」っていう力を上げるためには、会話の中で自分の疑問文のリストからベストチョイスができるかなんですね。

いっぱいある疑問文の中から、会話の中でコーチの隣で、この会話の中にベストチョイスの疑問文を入れられる力、送れる力っていうのは、これはもうトレーニングですね。

それも理由があるんですけど、コーチングを勉強していくと、どういう時にどういう疑問文が有効的か?っていうのがある。

これがチョイスですね、いっぱいあるストックの中から選んで届ける力。その届け方っていうのもあるんです。

例えば、質問ってすごくムカつくんですね、されると。

「何があったら合格確率上がると思います?」っていうトーンで言われるのと、「ねえねえ、何があったらさ、合格確率って上がると思う?」って聞かれるのと違うじゃないですか。

なぜかっていうと、誘導されてるんですよ、質問って、質問によって。

だから、すごく抵抗感も生まれる。だからこの言い回しとか、言い方とか、表情とか、トーンとか、タイミングとか、どれをチョイスするかとか、全部上がっていくと、どんどん質問力も上がってくる。

── その積み重ねが、マスターコーチは無意識的有能のレベルで質問ができる、ということにつながっていくんですね。この「質問力」というテーマは、本当に深いですね。時間がいくらあっても足りないんじゃないかと思うぐらいですね!

谷口:これだけで3日間くらいの講習ができあがります(笑)

僕今、こうやってしゃべっていて思ったんだけど、こういうふうに「質問力」を解説している本ってないかもしれない。

── そうですね。そういった内容の本はないように思います。

谷口:「質問力」っていうタイトルの本は山のようにあるんです。いろんな人が書いている。ただ、質問をどうやって作っていくかとかを紐解いたやつはないですね。

いつか書きますよ!

── ぜひぜひ!また新しい著書が増えるんじゃないかという期待を抱いております。質問について教えていただいて、見えていたものがガラッと、視野がすごく広がった感じがします。

今日のお話はマスターコーチの谷口さんだからこそお伝えできる内容だったのではないかと思います。本当にありがたいです。

谷口:いや、これも視聴者が質問してくれるからだね。やっぱ質問のパワーってすごいと思う。だから考えるわけです、こうだこうだって。

── 無意識的有能の中から、どんどん今出て来たっていうことですね!今日も限られた時間の中で素晴らしいエッセンスをギュッと抽出していただいたと思います。ありがとうございます。

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