人に何かを伝えたいときに必要なことは? #20
── 今日は、「人に何かを伝えたいときに、必要なことはありますか?」というテーマでお話を伺っていきます。
谷口さんは、今まで数多くのクライアントの方達にコーチングをされてきたと同時に、企業研修などで講師としても数えきれない人数の方とお会いして、「伝える」ということを長年お仕事にされてこられたと思います。
谷口さんが、人に何かを伝えたいときに大切にされているポイントがあれば、ぜひ教えてください。
谷口:これしゃべると3日ぐらいかかるけど大丈夫?
── やっぱり(笑)!今日は、かいつまんで教えていただけますか?
谷口:今、「伝える」といいましたね。
まず僕は言葉をすごく大切にするんですけど、「伝える力」と「伝わる力」って違うじゃないですか?
僕が意識してるのは「伝わる」なんです。
目次
「伝える」より「伝わる」を意識して
谷口:いろんな伝え方があるじゃないですか。
例えば僕だったら、人前で話す。セミナーとか講座とか講演で大勢の前で話す。これも「伝える」「伝わる」。
文字でもありますよね。僕は執筆活動して、文字で「伝わる」「伝える」っていうのもあるんですけど。
共通している点をいくつかお伝えしようと思うと、「内容じゃない」って言ったらいいのかな?世の中で僕たちが見聞きして届く情報ってもうすべてオープンですよね?
YouTube見たり、本を読んだり、インターネットで調べたら何でも情報が手に入るじゃない?
コンテンツとかを販売する人にもよく言ってるんだけど、何を伝えるかじゃなくて、誰が伝えるか。
「何を」伝えるかではなく「誰が」伝えるか
── 何を伝えるかじゃなくて、誰が伝えるか?
谷口:そうそう。同じ話でも、例えば、「あ、あの人が言ってることなら!」とかいうのあるじゃないですか?
それが一つなので、特に気を付けているのが、自分自身を常にいい状態にしておく。
僕ね、『メンターの授業』のコメントですっごい嬉しかったことがあって。
僕と長い付き合いですという人がね、ある人にコメントを出して、「谷口さんほど、言っていることをそのまま実行している人を見たことがない。」っていうのを言われて、すっごい感激したんですね。
中にはいるでしょ?もっともらしいことを言ってるんだけど、「じゃああなたは?」みたいな・・・。
「言行一致」っていうんですけどね、口から出てる言葉と行動が一致しているかどうか?そういうことはすごい気を付けてます。伝える時にね。
だから、何を伝えるか、どのように伝えるかはコツがあるんですけど、まず、伝える自分が受け取る側からして、あの人からの話を聞きたいと思える生き方をしているかどうか?っていうのはすごく意識しているかな?
それが一つですね。何を伝えるかではなくて、誰が伝えるか?同じ内容でもある人から言われると届く、とかあるじゃないですか?それが一つね。
あとは、方法。ヒントをいくつかお伝えしようかな。
伝える「方法」を伝授します
まずは、文字で言うとですね、僕「ザ・コーチ」(本)を書く時に、夢はミリオンセラーにしたかったんです。100万部ね。そうした時に、過去のミリオンセラーを調べてみようと思ったの。共通点があるんじゃないか?って。
で、僕なりに見つけた答えが一つあるんです。それは、本にリズムがあったんです。本にっていうより文章にリズムがあるのかな?
#1 文章にも音楽のようなリズム感を
── 文章にリズムがある!
谷口:簡単に言うと、心地いい文章の切れ方とか音、なんですね。
── テンポとか?
谷口:テンポとかっていうのでもいいです。
だから僕、いろんな人をメンターで指導する時に、よくあるじゃないですか?メルマガ書いて独立とか、起業のために文章を書くとか、執筆するっていうときに、文章から音が聞こえる人がいるんです。こういう人は売れる。
音が聞こえるような文章を書く
── 興味深いです。文章から音が聞こえてくる!
谷口:僕がミリオンセラーを調べて、夏目漱石って大衆小説で有名でしょ?夏目漱石を調べてみたら、夏目漱石はリズムがあるんですよ。
例えば、『吾輩は猫である』。出だしが、「吾輩は猫である、まだ名前はない。」この出だしに音がない?ありますでしょ?
── きれいなリズム、テンポを刻んでますね。
谷口:良く調べると日本人が好きなリズムって、5・7・5で出来てるんです。俳句とか短歌とか。このリズム感で文字を切るんです。そうすると、飽きずにテンポよく最後まで読み続けることが出来る。
メルマガでも文章でもなんでも、小説でもなんでもいいです。文章をパーと書いた時、自分の頭の中で読んだり、出来れば音読すると良いんですけど、その時に5・7・5って日本人が好むリズムになってるかっていうのは一つ。
だから句読点は文法で打つんではなくてリズムで打つんです。読みにくい文章って特徴あるんです。〇(読点)が少ないの。点でずーっとつながっていく。
── 長くなっちゃってる!
谷口:政治家の文章ってそうなんですよ。わかんないですよね?だから、あれはすごく高度なテクニックだと僕は思う。もっともらしいことをずっと言ってるんだけど、結局分からない。あれね、点ぱっかりなんですよ。あとね、行政が出してる文章も点ばっかり。
── だから、伝わりにくいというか、理解しにくいというか。
谷口:まずこれが一つ。話す時も、書く時も、リズム。だから、音楽のような文章が良いかな?そこに抑揚があるし、リズムがある。
思い出したんだけど、音楽のね、ピアノの先生とかに知り合いがいるんですけど、音符で一番大事なのものは休符なんですって。要は休むっていう。だから、文章とか言葉も、「間」って分かります?
書道では「余白の美」っていうんです。白い紙に書くじゃないですか?色でいえば2色、白と黒。
大事なのは余白の書かれていない部分なんです。
それは美術で額縁だったり、余白だったり。文章でも「間」、文字がないところ。
人の前でしゃべる時に、ずっとしゃべり続けると届かない。「間」がそこにあるから。こんなのも一つポイントですね。
あとは、相手の母国語で伝える。
#2 相手の母国語で伝える
谷口:伝えたい内容があるとするじゃないですか。
例えば、コーチングにしましょうか。コーチングをする時に、チャンクダウンって言葉があるんですけど、チャンクダウンっていう言葉を一般の人は使います?
── ちょっと、耳慣れない言葉ですよね。
谷口:ですよね?だからチャンクダウンっていうのを使って説明しても届かない。
でも、例えば、ある出来上がったものを元々の材料を分けて、どうやってそれを組み立てていって、その形にするかっていうのをはっきりさせる、って言ったら分かりますか?
── はい、分かりました。
谷口:これが相手の母国語を使う。相手が普段使っている言葉で説明する。
それと、その領域の専門家の人って専門用語をよく使うんです。これはよく本に書いてある、「専門用語とカタカナ用語は使うな」って。相手の母国語を使う、っていうのも一つ。
#3 一人一人に語りかける
谷口:あとは、もし、大衆が目の前にいるとしたら、大衆には届かないんです。名スピーカーっていうのは、一人一人に届く。
これはよく外国だとトレーニングするんですね、大統領のスピーチとか。日本の安倍さんはまだ下手なんですけど、テレビで顔は振るんですけど、目が合わないんですね。
上手い人は、聴衆がいたら一人一人に、あの人に、この人に、全部アイコンタクトをして、1センテンス毎にこうやって届けていく。アイコンタクトをしていく。600人いたら、あなた、あなた、あなた、あなたへ、っていう風に届けるっていうのが一つ。
あとは、話の構成を三部構成にする。これは「WHY」「WHAT」「HOW」って言われている。これゴールデンサークルって言ってこの話をYouTubeでしゃべっている人、サイモン・シネックさん。「WHYから始めよ!」だったかな?よかったら後で調べてもらうといいんですけど、YouTubeでも出てきます。
#4 話の構成を三部構成にする
谷口:でね、アップルの広告とか、この三部構成で出来てるんです。「WHY」「WHAT」「HOW」で。
簡単に言うと、それはなぜなのか?何のためなのか?何がどうなっているのか?で、それをあなたが望むようにするためのはどうすればいいのか?
これが「WHY」「WHAT」「HOW」で、僕は本にこれ3つ必ず入れるようにしているんです。
なぜなのか?どうしてなのか?じゃあ何について知ればいいのか?それを出来るようにするためにまずどうすればいいのか?っていうのが入ってるんです。わかんない本って「WHAT」だけなんです。
── 何をするとか?
谷口:これはこうです、これはこうです、これはこうです、しか書いてない。
なぜそれを考えなきゃいけないかとか、なぜそれを知る必要があるのか、それは何のためなのかの「WHY」がないんですね。それをじゃあどうすればいいの?
例えば、「人の話を聞いた方がいいです。」は「WHAT」だけですよね。なぜ?って書いてないですよね。どうするの?っていうのないんです。
じゃあ座り方をこうしてみましょうとか、場所はこういうところを選んでみましょうとか、まずは相手の目を見てうなずいてみましょうとか、っていう風に「HOW」があったら聞けるようになるじゃないですか。
まぁこの3つかな。「WHY」「WHAT」「HOW」そんなとこかな?今パッと思いつくのは。
── すごいです!これ本当に3日間かかりますね!谷口さんからから聞き出そうと思ったら。
谷口:まだまだあるんですよ!
── この短い時間の中に、すごく凝縮した秘密を教えていただいたような感じです。
「ザ・コーチ」の本を読まれた方の感想に、「すごくわかりやすくて心に届いてきた」そういったご感想がとても多いなって思ってたんですけど、やっぱりそれは谷口さんがどのように本という媒体を通じて伝わっていくかっていうのを、本を書く前に準備されているからなんですね。
谷口:しますね。本で言うと、僕結構準備するんですけど、やっぱり小説にしたかったのは、届く話っていうのは「ストーリー」なんですね。
「成功者は皆、ストーリーを語った。」っていう本もあるんですけど、やはりリーダーっていうのはストーリーを語らなきゃいけないんですよ。
ビジネスストーリーとかビジョンとか、全部ストーリーなんですけど。だからまずストーリーなんですね。
「ストーリー」って事実と事例でできてるんですよ。
ストーリーを届けよう
谷口:それは架空かも知れないけど、事実と事例でできてる。それは届きやすいんです。
例えば、講演家とか研修講師とかも、考えや概念だけでしゃべってると届かないんです。ここに事実と事例、僕はこうしたとか、ある人はこうやってこうだったとか、っていう事実と事例が入ってくると届きやすいっていうのも一つかな。
だから本を書くとき、僕は全部、主人公の生まれた年から、星野とかね、主人公とか奥さんの何年何月どこ生まれって決めて、どんな両親から生まれて、幼少のころ何をやっていて、どんな性格でって全部人物ストーリーを作ってから書き始めるんです。結構これ大変なんです。
── 細かな人物のプロファイル像というか、それを作ってから?
谷口:何年生まれの人の青春時代の日本の世の中がどうなってて、その人たちは何を見聞きしてたのか?っていうのを全部調べる。だから松田聖子の「赤いスイートピー」とかが本の中に出てくる(笑)事例と事実ですね。
── すごいですね。谷口さん、本当に時間が足りないのでこのテーマ、またぜひお願いします。
谷口:3日かかっちゃう(笑)
── また別の回に、「伝える」「伝わる」っていう「伝わる力」っていうのを定期的に谷口さんからお聞きしていきたいなと思っております。
視聴者の方からお預かりした質問の中にも、「人に何かを伝えたい時に、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまうので、伝えるために必要なことがあれば知りたい。」っていう言葉があったんですけど、今日、谷口コーチからお聞きしたことをまずやってみてもらったら、今まで以上にスムーズな伝え方、伝え方っていうより伝わったという実感を得てもらえるんじゃないかなと思います。
谷口:はい!