コーチングの4つの聞くレベルと聞く力の磨き方 #128
―― 今回は「コーチングの4つの聞くレベルと聞く力の磨き方」というテーマで谷口コーチにお話を伺っていきたいと思います。
今回も前回に続いて「聞く」がテーマなのですが、前回は聞く姿勢、効果的な話の聞き方についてお話を伺ったのですが、今回はさらに踏み込んで、聞くことのレベルについて、そして、自分の聞く力のレベルの上げ方、聞く力の磨き方について教えていただきたいです。
谷口コーチは、コーチングの「きく」には4つレベルあると言われていると思いますが、その4つ「きく」のレベルとはどういったことなのでしょうか?
そして、コーチとして、より上位のレベルの「きく」力を手に入れたいと思ったら、どのように聞く力を磨いていけばいいのでしょうか?
谷口:前回は「話させる」、聞き上手になるっていうのは話させ上手なんだと。
人は話すと、すごく話した人に良いことが起きるので、優れた聞き手にはたくさん話したい、だから優れた聞き手っていうのはモテますね、みたいな話になったよね。
今度はまさに「聞く」なんですね。前回は「話させる」、今回は「聞く」。
僕、いろんな所でこれ言ってんですけど、僕もこの世界に入って最初、傾聴が大事とか、人の話をよく聞きましょうみたいな話はよく聞くわけですよ、耳にするんですね。
僕が習った時に、やっぱこの「聞く」というタイトル、当時はモジュールって言ってましたけど、学習を1ヶ月ぐらい続けてすると。
僕もそれを今度教える側になった時に、自分でもよく理解していないとうまく教えられないなということで、普通はあんまり調べないと思ですけど、「聞く」ってどういう意味なんだろう?と思って、辞書で調べてみたんです。
目次
「きく」について考える
谷口:それで、まず1つびっくりしたっていうのが1つですね。そこからちょっと説明しようと思うんですけど、あんまり「聞く」ってどういう意味かなんて、辞書で調べないよね。
―― そうですね。調べないです。
谷口:調べると面白いのは、最初に門構えの中に耳って入れて、話を「聞く」っていう字はよく使うじゃないですか、それがまず出てきて、それと並んで違う字が出てきてそれぞれこういう意味なんですっていうの出てくるんですね。
皆さんも一度調べるといいんですけど、「聞く」って、人の話を聞く、鳥の声が聞こえるとか、そういう意味になるんですけど。
その横に、耳偏の、傾聴の聴っていう字で、「聴く」って出てくる。
そうすると、「聞く」ってのは、なんとなく聞いてるんですよね。
で、耳偏の傾聴の「聴く」っていうのは、すごく集中してとか、意識をそこへ向けてとか、ちゃんと聞き取ろうとしてる。
本当は、人の話を「きく」っていうのは、耳辺の「聴く」方なんだろうなと思うんですけども、「あっ、違うんだ!」と思って。
次に、道を「訊く」とかっていう、ごんべんの、訊問の訊っていう字、尋ねるっていう字が出てくる。確かに、道を訊くっていう、これは尋ねるか。
その次は、面白いんですけど、利用の利って書いて「利く」。
次に、効果の、効って書いて、「効く」っていう字が出てくるんですね。こっちは、有能だとか、有益だとか、働きかけるとか、期待通りの結果が出るとかっていう意味なんですよ。
なので、鼻が利くとか、気が利くとか、いうし、薬が効くとか、釘が利くとかっていいますもんね。
だから、そこに、すごく働きかけて、有益だとか、効果があるみたいな意味になってくるんですね、能力が高いっていう意味も出てくるんですけど。
そうすると、「鼻が利く」っていう人は、普通の人よりも匂いを色々感じる能力が高いんですね。
それは、これはこの匂いだね、これはこの匂いだねとか、僕にはわからないような匂いを嗅ぎ分けることができる、これを「鼻が利く」と。
ああ、そういう意味なのねってまず思ったんですね。ここでですよ!
っていうことは、僕たちの五感で、例えば、鼻が利くとか、気が利くとか、いろんなそういう意味で使うと、嗅ぎ分けれられる人いますよね、犬まではいかないだろうけど。
次に見分ける人もいますよね、聞き分ける人もここにいると。それで、そうかと。
この五感を使って、凡人っていうか常人っていうか、普通の人とは違った識別ができることをいうんだと思った、要は区別ができる能力。
僕は別に警察犬じゃないけど、犯人の匂いとか嗅ぎ分ける必要はないので、嗅ぎ分けるは要らないけど、人の話を聞くので、聞き分ける能力が必要だなと。
話戻ると、とにかく一般の人より何かをきき分けられる、嗅ぎ分けられる、要は見分けられるとかっていう人って世の中いっぱいいるじゃないですか。
例えば、鑑定士さん、見分ける技術すごいですよね、これは偽物だとか、これは本物だとか、僕なんかわからないですよ見ても。でも、鑑定士さんは見分けることができると。
ソムリエさん。味覚とか、匂いとか嗅ぎ分けられたりするよね、すごくないですか。口に含んで、匂い嗅いで、色を見て、年代とか作った場所とか、ブドウの品種当てられるんだよ。
あと、ブレンダーさん。香水とかお茶とかコーヒーとかお香の世界。いい香りだなは、わかるけど、何の匂いかっていうのは僕はわからないね。
あと、利き酒士さん。お酒のお米の種類とか酒蔵とかわかるじゃないですか。
てことは、プロって一般の人にはできない識別ができる人だと思う。
じゃあ、僕はコーチなので、聞き分けることは一般の人ができないほどできる。っていうのを目指したわけですね。
コーチングの4つの聞くレベル
谷口:じゃあ早速、4つのレベルなんですけど、僕はこういう風にしました。
まずレベル1。相手の言っていることを正確に聞いている。
レベル1:相手の言っていることを正確に聞く
谷口:僕たちって相手の言ってることをもしテープレコーダーに取ったとしますよね、で、それと同じレベルで正確に聞いてる?
―― 聞けてないと思います。
谷口:ですよね。途中途中なんか考えてたりすると、そこって抜けてますよね。それで、自分で勝手に都合のいいように少しフィルタリングしてないですか?
―― あります。よくあります。
谷口:ありますよね、だから、言った、言わないが起きるんじゃないですか。あれって言ってる方も真実だし、聞いてる方も真実なんですよ。
で、聞いてる方は一部分フィルターをかけたり、都合のいいものに書き換えて聞いてるんです。
だから結構ね、言ってることをテープレコーダーに取るように正確に聞くっていうのもレベル高い。でも、これでもレベル1。
レベル2。相手の言わんとしていることを聞いている。
レベル2:相手の言わんとしていることを聞く
―― 言わんとしていることを聞いている。
谷口:では、若松さん、今度言う側になってもらいます。
何か自分の思いや考えや情報を、相手に全て僕たちは日本語主に使いますけど、その母国語で自分と同じ性格やレベルで、相手に正しく言葉だけで伝えられる?
―― 伝えられないこともよくあると思ってます。
谷口:ですよね。時々の人の話を聞いてて、こいつ何が言いたいんだろう?と思うようなことってないですか。
―― あります、あります。
谷口:ってことは、本人は一生懸命なんですよ。でも、聞く方からするとわからないと。
っていうことは、前提で言うと、人はレベルによって違いますよ、子供とそれこそ有識者とでは説明能力が違うし、語彙力も違う、相手によって違うんですけど、前提は自分が思ってることや考えてることを言葉だけで相手に伝えるのは非常に難しい。
ってことは、『聞き手がこういうことを言いたいのかな?』とか、『言わんとすることはこういうことかな?』って協力しながら聞いていかないと。
「こういうこと?」みたいに「そうそう、それが言いたかったんだよ。」っていうのは、共同作業なんですよ。「よかった、わかってもらえて。」みたいな感じですね。
レベル3。うまく言えないこと、あえて言わないでおいてること。言えないことや言わないことを聞いている。
レベル3:言えないことや言わないことを聞く
―― 言えないことや言わないことを聞いてる。
谷口:例えば、子供を想像してもらえます?すごく、緊張している、ちょっと恐れている、怖い思いをした先生にしましょうか、学校の先生に、自分の悩みや苦しんでることを伝える時と、
すっごく安心して、いつも何を言っても嫌な思いをしないって思ってる先生に、自分の悩みや苦しんでることを言う時で、言ってる内容や情報量って一緒かしら。
―― 違うと思います。
谷口:違いますよね。ってことは、相手との関係性によって、人は自分の内側にある考えや悩みや情報は、様子見ながら喋っているっていうことですね。
人は自分の内側にあるものを全て表に出してない。ていうことは、言わないでいることや言えないことがいっぱいあるってこと。
でも、それってなんだろう?っていうのまで興味を持って聞いている。
レベル1、2は表に出てることですね。レベル3からは表に出てないことを聞くようにしたいですね。
じゃあ、いよいよレベル4。
言っている本人が、自分でも気づいてないことを聞いている。
レベル4:言っている本人が自分でも気づいてないことを聞く
―― 自分でも気づいていないことを聞いている。
谷口:ちなみに自分のことを知ってるって「自覚」って言うじゃない。何か人と喋ってること時を想像してもらえます?
人と喋ってる時、自分の内側にどれぐらい意識が向いてるか?なんですけど。外に意識が向いてます?自分に向いてます?
―― 話してる時ですか・・・状況によって違うかもしれないですけど、大抵、外に向いてると思います。
谷口:外に向かってるんですよね。だってその前に話す相手がいるわけですから、ああ言おう、こう言おうと。
往々にして、人ってやっぱりどうしても外へ向いてるんです。内側にはなかなか向かないんですね。
なので、喋っていながら、自分のことで気づいていないことや、見落としていることや、忘れていることが山のようにある。
それで、それは何か?っていうことまで聞こうとしてるんですね。
例えばでいいですよ、僕たちコーチと同じように、人の話を割と聞く仕事ってあるじゃないですか。
「きく」側のレベルが違うと結果が変わる!?
谷口:内科医さんって問診ってしますよね。お医者さん、病院のね。内科医さんが特に問診します。
ってことは、お医者さんが聞く人で、患者さんが話す人。
レベル1:患者さんの言っていることだけを聞いて診断やし、治療を始めようとするお医者さん。
レベル2:患者さんの言わんとしてることも聞こうと努力して診断や治療を始めるお医者さん。
レベル3:患者さんがうまく言えないことや、ちょっと言わないでおいてることはも聞いてあげようとして、聞き取って診断や治療するお医者さん。
レベル4:患者さんが自分でも気づいてないことを、ちょっとこれは当てに行く感じなんですけどね。「こんなことないですか?」みたいに聞こうとして、それまで聞いた上で治療や診察や治療をするお医者さん。
で、結果は一緒だろうか?
―― いや、違うと思います。
谷口:どう違うと思う?
―― その人が持ってる病気だったりっていうのをより正しく判断できそうな気がします。
谷口:ですよね。1とか2レベルだと誤診の可能性ありますよね、すごく。
尚且つ、話し手は専門家じゃないですよね、医学の。自分の症状を専門用語で説明する患者さんってそういないよね。
―― いないですね。
谷口:いないですよ。それで、自分の内側の症状を専門家に正しく全て言語化できる人もいない。
ていうことは、聞く側の能力次第で、その診断に対する情報が変わってきて、結局治療が変わってきちゃう。
だって、重大な何か病気のちょっとした症状かもしれないですもんね、どこかが痛いなんていうのはさ。
結局、気づいていないこととか、結構因果関係ってあるんですけど、例えば、なかなか風邪が治らない、咳が止まらない。ウイルスの可能性もありますけど、ストレスの可能性ないですか?
でも、そうすると、最近眠れてるの?とか、職場が変わたの?とか、仕事が変わった?とか、上司が変わった?とか、要は家族に具合が悪い人が出た?とか、ちょっと法的な問題を抱えてる?とかが、もしかしたら風邪の症状を長引かせてる可能性もあります。
でも、それは聞き手が専門家なんだから、「こういうことないですか?」って聞いてあげないとわからないし、言われたら本人わかると思いません。「あ、確かにそうです。あ、それもあります、そういえば最近そんなことがありました。」って言ったら、「ストレスも原因かもしれませんね。」って診断が下りますもんね。
というように、実はプロであればあるほど、プロの方が能力を有するんですよ。
だから、例えばお医者さんですね。で、次がセールスマン。お客さんのニーズを聞きます。
あと、販売員さんとかいますね、百貨店とかで。あとは相談員とかっていう人いますよね。
多分、普通の人よりもまさに高いレベルで聞く、聞き分けられる、聞き取れる能力を必要とする職業なんじゃないかなって思っているんです。
今度、コーチで考えるとね、僕の経験上、レベル1、言ってることだけで、それを聞いてコーチングしてる人って初級中の初級。そうすると、言ってることについて質問しちゃうんです。
でも、マスターとかプロフェッショナル以上になると、うまく言えないことや自分でも気づいてないことを聞き取って、質問とかフィードバックするんですよ。
これで全然違っちゃうんです、コーチングの質が。
なので、僕はトレーニングとかね、いろんな虎プロでは、この聞き取る、聞き分けるレベルを1から4に近づける練習や努力をしたらいいんじゃないですか、そうすると、あなたのコーチが変わってきますよ。っていうのを伝えてます。
これが4つのレベル。
じゃあ、どうやって聞いてるんだって話ですよね?このHow toが知りたいわけでしょ。
聞く力の磨き方
谷口:まず、じゃあ方法1つ。
脳はね、関心を持ってるものをキャッチアップしようとするんです。それを取りに行こうとするってことですね。
じゃあ、どうやって自分の脳に、聞き取る時の関心のアンテナを立てるかっていうと、問い立てるっていうのがいいんです。
―― 問い立てる。
谷口:問いを立てながら聞く。
では、僕どうやってるかっていうと、聞いてる時に『言ってることは、正確にいうとどういうことを言ってんだろう?』口には出してないし、頭の中に疑問文、言っていることは何か?だから、頭の中にクエスチョンマークを立てて聞いてます。
次、『言わんとすることは何かな?』問い立てて。
次、『うまく言えないことや、言わないでいることはなんだろう?』問い立てて。
最後に『本人も気づいてないことはなんだろう?』
それで、4つの問いを立てながら話を聞くと、クエスチョンマークで相手の言ってること、言わんとすること、うまく言えないこと、本人も気づいてないことがだんだん、だんだん聞けるようになってきます。
これが方法1です。
次、何をヒントにそれを聞き取ろうとするか。判断材料っていったらいいんですかね。それは何か。
代表的なのが、よく言う口癖、繰り返される言葉。
あと、主語ってありますよね。主語は何なのか。で、主語が結構消えてるんですよ。日本語って。
次、助詞。点、それが~とか、それに~とか、それを~とかっていうのもあるし、何々だよね~、みたいなのもあるし、色んな言葉にくっつくやつ。動詞の前と名詞の間とか、動詞の後についたりとかする助詞。これ結構ヒントになる。「に」とか、「ね」とか、「が」とか、「は」とか、こういうやつね。
次、語尾。「~だし。」「~だから。」「~なので。」、こうやって点で終わるのか、丸で終わるのかとか、どういう終わり方をするのか。
あと、トーンとか、リズムとか、ボリュームってありますね。強弱だったり、スピードが変わるとかあるリズムがテンポが変わる。
こんなところを判断材料にして、うまく言えないことや本人に気づいてないことを聞き取ろうとしてます。
僕が思うのはね、どんな職業でもプロと言われる人はその道の能力やスキルが卓越してる人であるならば、僕たち傾聴って言ってるじゃないですか、でも、傾聴って、僕、レベル1か2のような気がするんですよ。
でも、もっと深い、プロのちゃんとしたコーチ、それも上級なプロコーチになるためには、レベル3、4まで聞き取れるような、聞く力が備わると、多分これを聞いてる人のコーチングの質がまるっきり変わると思います。
どうだろう。若松さんが聞きたいことの答えになったかな。
―― いや、もうすごく、それ以上に教えていただいて、すごく参考になりました。
谷口:だから、前回のとね、一緒に見てもらうといいんだけど、まず上手に相手に話を促す力、話させる力ですね。
で、もう1つがプロのコーチはちゃんと聞き分ける力。この2つが備わったら、質問も変わるし、フィードバックも変わるし、他のスキルが圧倒的に変わってくると思います。
ぜひ普段から高めてみてね。