マスターコーチの質問の構造とは? #88

最終更新日:2022年7月18日

―― 今日のテーマは「質問の構造」についてです。

一般の方がする質問とプロコーチがクライアントにする質問は、質が全く異なるということを、常々、谷口コーチは言われていると思いますが、プロコーチの質問がどんな構造で成り立っているかがわかれば、一般的な質問とプロコーチの質問の違いをより明確に理解することができたり、同じような質問を作ることもできるようになるのではないかと思います。

具体的には、プロコーチの質問はどんな構造になっているのでしょうか?

谷口:深いところついてきましたね。質問で言ったら、質問のレクチャーとかトレーニングだけで何日も何ヵ月も使う。

そして、プロのレベルでも違うんです。初級レベルかマスターレベルかによっても違う。なので、概論的な話になっちゃうんですけれどね。

では、質問についてちょっと一緒に考えてみようと思うんですけれど、まず質問は2つに分けられます。

英語で言うとfor me、「for me 質問」と「for you質問」があるんです。for me=私のための質問、for you=あなたのための質問

僕たちは日常いろんなところでいっぱい質問してますよね。

では、for you質問=あなたのために質問してるのか、for me 質問=私のために質問してるのか、どっちが多いと思います?

―― 私のためにの「for me」の方が多いと思います。

谷口:多いよね。例えば会社でも、上司が部下に質問するじゃないですか。セールスマンが帰ってきます。

「おぉ、A君、お帰り!どうだった?結果。」

「いやー、うまくいきません、イマイチでしたね。」

「え、何?どういうこと?」

「いやー、お客さんもう少し検討したいって言ってるんですよね。」

「何か問題でもあったのか?お前のプレゼンが悪いんじゃないのか?」

「いやプレゼンは上手くいったんですけどね。何かはっきりしないんですよね。」

「競合出たんじゃないの?」

「いやそれはあんまり思い当たらないんですけどね。」

「そうかー。じゃあ先方に何か決められない事情とか出たんじゃないの?」

「いやー結構明るいんですけどね。」

これって上司が知りたいことでしょ?ほとんどこれですよね。例えば母親や親が、子どもが学校から帰ってきたらこういう質問しますよね。

「○○ちゃん、学校どうだった?楽しかった?給食全部食べた?勉強してる?宿題でてないの?先生何か言ってた?」

段々こういう質問ばっかりされると子供は、「うーん、別に・・・」とかって言いますよね。

これが情報収集の質問なんです。これがまず一般的です。

自分の興味、関心、自分の知りたいことを尋ねる。一般はこれですね。

コーチのレベルで質問はどう変わっていくのか?

谷口:コーチになると「for you」。相手が自ら考える、自ら見つける、自ら発見する。考えたり気づいたりする質問をするんですが、

まず、ここで分けると、一般的な日常会話だと、ほとんどfor me が9割9分。for youがわずか1%ぐらい。滅多にfor meの質問しないですね。

じゃあ、コーチングを勉強しだしました。初級の資格だったら、僕のイメージでは、for meが50%、for youが50%ぐらいなんですね。

次に、プロレベル。プロフェッショナルレベルで言うと、for meが3割、for youが7割。だから圧倒的にfor youの方が多くなるんですね。

じゃあ、マスターレベルっていうと、for meが10%以下だな。for you、ほとんど相手のための質問が9割強。

この、自分のためか相手のためかの割合がコーチになっていくと変わります。またそのレベルによっても。まずそれが一つです。

だからコーチングを勉強してる人が、自分はfor meの割合とfor youの割合が、何対何で普段コーチングしてるかなって、自分のコーチングを録音したりして分けるといいです。

そうすると、すごくいい勉強になると思います。

何を導き出すのかで疑問詞を使い分ける

谷口:次です。質問は疑問詞で作りますよね。疑問詞を一緒に考えましょう。5W1Hわかりますか?

What=何?、 Who=誰?、Which=どっち?、When=いつ?、Why=なぜ?、あとWhere=どこで?もあるかな。HだとHow、どのように?とか、How meny、How much、How long、みたいにどれぐらい?みたいな。

実はこれらは2つに分けられるんですよね。What=「何?」「どのように?」「どんな?」。次にWhy=「なぜ?」「何のために?」。次How=「どのように?」。これで1つのグループ。

あともう1つは、「いつ・どこで・誰が・どっち・どれぐらい」みたいなもののグループ。2つに分けました。

例えば、Aグループを「What」のグループにしましょうか。

Bグループが「いつ・どこで」のグループにしましょう。

この疑問詞を投げかけると、Aグループで投げかけた時と、Bグループ投げかけた時で、答え方違いそうじゃないですか?

―― はい、違いますね。

谷口:どっちの方が簡単に答えられますか?

―― Bグループの方が。

谷口:そうそう。いつ・どこで・誰が。なぜかというと、これは検索しに行くんです。探しに行く質問なんです。

―― 探しに行く質問。

谷口:でも、「なぜ?」とか「何のために?」と聞かれると、考えますよね。

―― はい、考えます。

谷口:これは思考をするんです。コーチはこれも使い分けていくんです。

今は、相手が考えられるように手伝うのか、相手が探しに行くことを手伝うのかによって分けるんですね。これで分かれます。これを「オープンクエスチョン」で括ります

次に、できた、できないかとかって聞くのを「クローズドクエスチョン」って言うんです。Aですか?Bですか?あんまりコーチングでは使わないんですけど、でも効果的に使う方法もあるんです。これについてはゆっくり質問の僕の動画で勉強してください。

まずはさっき言った、考えるを導く質問なのか検索を導く質問なのかによって分かれるんです。まずこれですね。

次に、コーチがする質問の目的の代表的なものに、「視点を増やす」と「視点を変える」ってあります。

では「視点」ってどんな意味だか分かりますか?

視点とは?

―― 視点ですか?改めて言われると・・・。なんでしょう。視点、上から見た・・・とか、

谷口:そうそうそう、上から目線とかね。

まず、今僕はカメラを見てるんですね。で、こっちを向きました、っていったら、今窓が見えます。ということは、視点っていうのは自分の視線を送っている対象物のことを言います

これはカメラ、その向こうにはあなたの顔が見えます。移動しました。僕の視点は窓に変わる。これが視点が変わるってことです。

もう一つは、見ている場所を指します

「僕から見ている」って言ったら僕が視点なんです。

「視聴者から僕はどう見られてるだろう?」って言ったら、視点が視聴者に移動する。

「この2人の会話を外から見たらどう見える?」だと、第三者の視点に変わります。

もっと言うと、上からとかありますね。俯瞰とかよく言いますけど、これが視点が移動してるってことなんです。

では、何か課題や目の前に障害があらわれたとしますね。コーチをしているとあるんですが、その時に、視点が少ない、もしくは狭いっていう時と、いっぱい視点がある、見えているっていう時とでは?

いろんな場所で見えている。だから多いとか多角的にとか広い、視点が少ない狭い、どういうときの方が問題解決はしやすいと思います?

―― やっぱり広く色々な視点がある方が解決できやすいと思います。

谷口:できそうですよね。ということは、上手くいってない時っていうのは狭いし少ない時なんです。なのでコーチは視点を移動したり、視点を増やしたり、視点を変える

んです。で、これを目的とした質問を相手のためにしてあげるんです。人って、問われると考えるんですよ。

視点を移動させる質問とは?

谷口:では若松さん、今若松さんの部屋の中にある時計って何時を指してます?(視点が)移動したでしょ?今。

―― 移動しました。

谷口:視聴者の方にはわからないけれど、カメラから時計に(視点が)移動したんです。ということは、視点を指す名詞が「時計」なんです。

今は例で「時計」を出しましたけど、その視点を指す名詞を僕たちコーチはいっぱい持ってるんです。

例えば、クライアントさんが「やらなきゃいけないことが溜まってて、もうどんどんどんどん、それで苦しくなって上手く進まないんですよね。」って言ったとします。

そしたら視点は「やるべきこと」です。

では、僕は手伝います。「○○さん、そっか、やることいっぱいあるんだね。ところで、○○さんにとって一番重要なゴールって何だったっけ?」と言ったら、「やるべきこと」から「ゴール」に移動するんです。「あぁ、これでした。」

「では、今やらなければいけないなって思ってることで、ゴールに関係する、ゴールにとって重要なことと、そうでもないことって何?」って聞いたら、これでプライオリティに分かれるんです。

次、「じゃあ○○さん、そのゴールを達成するっていうのは、そもそもなぜ、何のためにそれをしたかったんだっけ?」って質問すると、「目的」に移動するんです。

「では、それが叶った時の○○さんって、いつどこでどんな生活を営んでると思う?」っていうと「ビジョン」に移動するんです。

この視点のリストを山のように持ってるんです、僕たち。

―― 視点のリスト。

谷口:今みたいに視点を増やす、視点を移動する、視点を変える、もしくは思考を促す、検索を促す、というのを全部意図的にやっていく

それの更に深い所では、for you とfor meをちゃんと区別していく、っていうのが、質問全体像の構造っていうか考え方かな。

あと詳細は、これやったら2日間、2か月、1年かかりますんで。

―― でもすごいですね。この質問を使いこなせるようになると、ものすごいですね。何か、価値というか。

上質な質問がもたらすものとは?

谷口:ありますあります。なぜかというと、僕たち人間ってほとんど考えて行動してるんですね。その考えの質がいい方が行動の質が良くなるんですが、その思考の質っていうのは質問の質で変わる

んです。

「何でこんなことしなきゃいけないんだろう?」っていう質問をしたら、あんまりいい思考にはならないですよね。

―― そうですね。

「今やってることはどんな意味があるんだろう?」って質問してから考えて目の前のことにあたるのと、

「なんでこんなことやんなきゃいけないんだろう?」って質問してから目の前のことにあたるのとでは、思考と行動がまるっきり変わるんです。

なので、コーチは上質な質問の専門家でもあるので、その上質な質問がクライアントさんに増えれば、思考の質が上がって行動の質が上がるので、

そんな意味でも、もし質問っていうのに道ってつけて「質問道」っていうのがあったら、それこそ初級・初段・黒帯とかっていう段が付くぐらい奥深いんじゃないかな。

―― そうですね。深いですね。谷口コーチのように極められた方は、もちろんクライアントさんにもそうですし、自分自身にとってもすごくいいなと思いました。

谷口:そうですね。人間って自分に質問してるからね。自分にする自問する質問の質が上がれば、自分の思考、行動が変わるので、それをセルフコーチングって僕たちは言うんだけど、自分にする、自分にどんな質問してるんだろうって考えてみても面白いかもね。

―― 面白いですね。

谷口:質問は奥深いんで、また機会があったら徹底的にやりましょう。

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