【コーチングの流れを徹底解説】オリエンテーション – 「コーチングの流れ」ステップ1 #63

最終更新日:2021年11月17日

谷口:では、「コーチングの構造」の最初のパーツである「オリエンテーション」について、最初に考えていこうと思います。オリエンテーションを受けたことありますか?

オリエンテーションとは?

谷口:オリエンテーションって何かというと、意味を調べると「新しい関係性が始まるときに、その後、その関係性がうまく続くように、最初のうちにいろいろ準備をしたり整えること」と出てきます。

これを見ている人にオリエンテーションの経験があるとしたら、大学ではやるんじゃないかな。大学1年生になった時に、多分学校が新入生に対してオリエンテーションをやると思います。

学校法人という法人格と、新入生という一人の個人が、学校の中で新しい関係性を始めるわけですね。入学して学校生活を始めるので新たに関係性が始まる、というのでオリエンテーションをします。

あとよくあるのが会社ですね。わりと大きい企業だったらやるんじゃないかな。会社という法人に対して、大学を卒業するのか中途で入ってくるのか、新入社員としてその会社の一員になって働くときに、オリエンテーションをやります。

つまり、新しい関係性がそのあともうまくいくように、順調に進むように、最初に準備したり整えることがオリエンテーションですね。コーチングでもこれをやるんです。

以前にも絵を描きましたが、クライアントとコーチが出会って、最初にいろいろ準備をしたり整える時間を取ることをオリエンテーションといいます。

では、オリエンテーションは何でできてるかというと、代表的には2つです。まず1つが「関係を共に築く」です。次が、「同意を取り交わす」なんですけどね。それぞれやっていきましょうか。

#1 関係を共に築く

谷口:「関係を共に築く」っていうのは、クライアントとコーチの関係を、クライアントとコーチが一緒に作り上げていく。どんな関係を築くかというと、「親密」と「信頼」です。親密で信頼の関係を築きます。

親密とはどういうことかというと、何でも話せる、友達のような、心を打ち明けられる、本音でしゃべれるような、超安心感のある感じの関係です。信頼というのは、お互いに相手を信用し、信じて、未来を託す、頼り合うような関係なんですね。

では反対で考えていきましょうか。「オリエンテーションをもしやらなかったら?」という場合で考えればいいんですけど、こちら(親密と信頼)が安心して何でも話せる関係ですね。

では逆行きましょうか。不安や心配や建て前、偽り、ですね。安心じゃない、ちょっと怖い、不安。本音じゃない建て前、ちょっと本心じゃない、正直じゃない、ちょっと偽りレベル。

もしこのまま、コーチ・クライアントの関係を進めていったら将来どうなると思う?

―― 疑心暗鬼になる?

谷口:いいね。疑心暗鬼だったり、責任転嫁だったり、なんかしそうだよね。なので多分この関係は将来うまくいかないと思います。お互いを信じて頼ってないっていうと、多分これもうまくいかない。

つまり、まず関係性をちゃんとここで作っておかないと、ここからうまく進まないってことなんですね。

だからオリエンテーションをして、まず関係性を共に築きましょう。ですのでここでは、いろいろお互いのパーソナルなことも聞いたりとか、それぞれどんなストーリーでここまで歩んできたの?とか、どんな価値観を持ってるんだろう?とか、そんな話をするわけですね。

#2 同意を取り交わす

谷口:次に「同意を取り交わす」ですが、同意ってどんな意味か知ってますか?

分けて考えてみればいいです。同じ意味にする、とか、同じ考え、同じ理解、という意味なんですね。だから意味や考えや理解を同じくするってことなんです。

なぜかというと、僕たちは同じ言葉を使っていても意味が違うときないですか?例えば、企業研修でもよく言うんですけど、あなたにとって「今日中」って何時ですか?

―― 23時59分。

谷口:あなたのような仕事している人はそうだよね。でも、もし僕がマネージャーをやっていて、部下に「今日中」と言うとしたら、5時です。ということは「今日中」という言葉は全員意味が違うってことですね。至急や緊急の時間って全員違うんですよ。

というふうに、同じだろうと思ってると大きな間違いをするんです。なので最初にいろんなことに関して、こうだよね、ああだよね、と言って、同じ意味、同じ理解、同じ考えにしていくことを最初にするんですね。

では、どんなことをやるかと言うと、代表的なのが「責任と役割」ですね。僕はこういう役割でこういう責任を負っている、あなたはこういう役割でこういう責任を負っている、というものを、一緒に「これで合ってるよね?」「この意味でいいよね?」みたいにやっていくんです。

代表的なのがクライアントとコーチでいうと、これをやらないと、クライアントはコーチが教えてくれるものだと思っている人がいるんですよ。でもコーチは教えないんですね。教育者ではないので。

「私は教える人ではありません。あなたがゴールにより早く到達するように支援をする人です。」とか、「あなたはゴールや目標に向かってコミットし、全力で行動を起こす責任があります。私はコーチングを使って支援する責任があります。」みたいなのをやるわけです。

そして、「ルールや条件」があります。こういう時にはこうしましょう、これはやらないようにしましょう、こういう決め事でこの条件で進めていきましょう、とかがあるんですね。

他に何について同意を取り交わすかというと、お互いの個性とか、強みや弱み、長所とか、得技とか、いろいろありますよね。

このように、お互いのいろんなことに関して、「あぁ、そういう強み持ってるんだ。」とか「僕のコーチングのスタイルってこういうスタイルなんですよ。」とか「僕のやり方はこうです。得意なことはこうです。これは苦手ですね。」お互いこういうのを全部、ここ(オリエンテーション)の時点で同意を取っていくんですね。

では、これを「お互い大丈夫だよね?確認しなくてもいいよね?」って進めていったらどんな感じになると思う?

―― 先ほど考えの違いがあったように、ちょっとずつずれていきそうですね。

谷口:ですよね。そうすると何があるかというと、未達に終わるとか、途中でお互いにもの別れをしていくとか、クライアントさんの満足度も変わりそうじゃないですか?

僕の経験なんだけど、オリエンテーションを最初にやらなかったんですね。そうすると何となく進むんだけど、疑心暗鬼で進んだり、お互いちょっと不満を持ったり、不信感を持ったり、そのうち相手の責任にしたりして、契約が途中で終わるんです。

日本人ってすごいよね。本音で言わないもんね。「あなたのことが信用できなくなったんで契約解除します!」って言わないんですよ。「もう一人でできるようになります。」とか「今までありがとうございます。」みたいに、なんかお礼を言ってクライアントと別れていくんですけど、陰でSNSとかで悪口いうかもしれないですよね。

なので、事業としてもこういうのをちゃんとやっていかないと、悪評が立ったりとか、悪い評判が立ったりとか、そういうのにもなっていったりするんです。

ですので、最初に「オリエンテーション」で、2人の関係がずっと続いていく時に、順調に進むように、お互いうまくいくように、ゴールや目標を達成できるように、最初にいろいろ整えていく。これを「オリエンテーション」と言います。

ただし、なかなかコーチングを教えてくれるところで、これに時間を割いて、どのようにこの2つを具体的にやっていくのか、どんなツールを使うのか、を教えてくれるところってあんまりないんですね。

でも、僕はコーチをやってきて、オリエンテーションの重要性がすごくわかったので、僕のところではすっごくウエイトを置いていきます。コーチングスキルよりも重要なんじゃないかなって思うぐらいなんで、よかったら、ちょっとここは一生懸命勉強することをすすめますね。

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