コーチがセミナー講師に向いている理由 PART3 #49

最終更新日:2021年6月13日

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・・・【PART2】#48から続きます。・・・

谷口:今度は中身に入っていきますね。なぜリピートや感動をするのか?

リピートや感動につなげるには?

その理由はいくつかあるんですけど、「期待を超える」というのがまず一つある。

谷口:満足って、まず「期待」と「実感値」がある。例えば、何かサービスを受けようと思った、こうじゃないかなと期待をして頼んだ、そしてサービスを受ける。そしたら実感しますよね?

期待と実感が=(イコール)だと満足なんです。期待通りだなと。頼んで良かったなと。

期待より実感値が劣ると不満になる。期待通りじゃなかったなと。

ここでは満足度が高いって言い方をしているんだけど、期待通りだとあんまりリピーターは来ない。

── 満足はしているけど、リピートまではいかないということですね。

谷口:ここじゃなきゃいけないってわけじゃない。

#1 期待を超える

期待と実感値がイコールじゃなくて、期待より実感値が大きくなったら、人って感動したり、感激したりするんです。

感動とか感激っていうのは、心が動きますよね?

そうするとね、繰り返してそれを味わいたかったり、人に伝えたくなるんです。だから、僕のセミナーっていうのは、参加者の期待より実感値の方が大きくなるようにしているんです。

期待を超えることを構造化すればいいんですね。

── 期待を超えることを最初から構造化しておく。興味深いです。

谷口:大体期待というのはこういうものだろうなって。「やっぱりな」って思うと、イコールだけど。

だから僕のセミナーとか研修というのは、普通の研修とは違う会場の設定だったり、使うものだったりする。「あれっ?」って思わせればいいんです。そういうコツがあります。

たとえば、僕は「パワーポイントを映さない方がいいよ」って教えてるんです。パワーポイントに内容が映されると受けている時に安心しません?

── そうですね。

谷口:「あぁ、なるほどね」って。ということは、そこに感動も感激もない。大体期待通りに、「あぁやっぱりこうやって映すのね」ですよね。

だから、僕の研修にはパワーポイントもなければテキストもないんです。そうすると、まず「え?」って思う。

「いつもの研修と違う、今日は」って。だから、ざわざわ、そわそわするんです。

それで、受けだしてみると、「へぇ~」とか、「はぁ~」とかになって、期待値が下がって実感値をボンって上げるようにしてるなのでそういう行動をするとか。

#2 構成を工夫する

谷口:あとは、僕いろんなところで教えてるんだけど、中身の構成を必ず、「why」「what」「how」で構成する「なぜ?」とか「何をなんのために?」、「何をどうのように?」、「どうすればいいか?」

多くの場合は、「何」についてはすごく語られるんです。たとえば、今企業研修でよくいうのが、「これからは多様性の時代でお互いの個性を活かし合おう」っていうんです。

これって、「what」についてしゃべってるんです。「これが大事です」とか、「これが重要です」って言うんです。「以上!」と聞いて実行できる?

── みんな実行できなくて困ってますよね。

谷口:でも僕は、「こういう価値観を持っている人を褒めるときには、この言葉を使いましょう。」って言うんです。

そしたら、多様性を活かす方法の一つが手に入るじゃないですか。

── そうですね、やり方を今教わりましたね。

谷口:「じゃあやってみましょう。」と言って、トレーニングも入ってます。

多くの場合は「what」しかしゃべらない。

例えば講師が、「今は多様性を活かす時代です。多様性が活きれば新しい価値が生まれます。なので多様性を活かし合うコミュニケーションを取りましょう。それが重要です。」って聞いて終りである時と、

僕は共に作るだから、「なぜ今、多様性を活かし合うことが重要だって言われるようになったと思います?」って聞くんです。

そしたら自分で考えるじゃないですか?

じゃあちょっとやってみましょう。

「今は多様性を活かしあって新たな価値を作っていくことが重要です。だから会社の中では多様性を活かし合う、関わり方、コミュニケーションを取りましょう。」って言われた時と、

「○○さん、なぜ今多様性を活かしあうコミュニケーションが重要だって言われるようになったと思います?」って言われた時と違う?受け手として。

── 全然頭の中が違いますね。前者のように「これが重要です」って言われたら、「はい、そうですね。はい。」っていう感じで、本当に「以上!」ですね。でも後者ように「なぜ?」って聞かれると、「そうだ、その理由はなんだろう?」って頭の中で考え始める。もう全然違います。

谷口:違うよね?そう聞かれて何か言うと思うんですよね。全然頭の中が違います。「なぜ言われると思う?」「ああ、そうなんですね。隣の人にも聞いてみましょう。○○さん、なぜ今そういうように言われように?」って。そうすると、隣の人の意見も聞きますよね。

── はい、聞きますね。

谷口:それを聞いて「ああ、確かにそれもあるな。」と思う。そしてまた隣の人に「○○さん、なぜだと思います?」って。これ1対1でやってますよね?

ということは、あなたは自分の思ったことを自分でしゃべるし、僕が隣の人に聞いた隣の人の答えをあなたは聞いてる。さらに隣の人の答えもあなたは聞いてる。するとそこに発見だったり、気づきってない?

── すごいたくさん増えていきますね。

谷口:そこに、「僕はこう思います。」ってもう一つ提供するだけなんです。

「じゃあ、お互いの個性を活かし合う組織と、画一性、みんな同じを良しとする、人と違ってはいけないということを良しとする企業では、10年後何がどう変わると思います?」と僕が聞くのと

「多様性を活かしあう会社は将来も発展するでしょう。個性を殺して、人と違うことはダメだとする会社はいずれ衰退するでしょう。」って僕がしゃべったら、「はいはい」でおしまいでしょ?これが共に作るって感覚。

── こんな違いがあるんですね。

谷口:それができるのはコーチだから。一方的に説明しているのは講師なんです。それはインターネットに書いてある。だからつまらない。

── そうですねよね。

谷口:これがコーチは効果的コミュニケーションができるということですね。僕のはこういう構造に全部なってるので、「why」「what」「how」で構成しているっていうのが一つです。

#3 時間の長さを感じさせない

谷口:あとは、しゃべっている時と、ひとの話をずっと聞いている時で、どちらの方が時間が早く過ぎると思います?

── それはもう、人の話を聞いている時は時間が長く感じますよね?だから、しゃべっている時の方が早い。

谷口:そう。僕たちコーチは効果的なコミュニケーションや話を促すのが得意なんですね。なので、僕たちのようにコーチングが得意な人が講師をすると、参加者がしゃべっている時間が多いんですよ。でも一般的な研修講師がやっている研修って、講師がしゃべっている時間が長いんです。

そうすると参加者は、僕が提供する研修をやると、あっという間に終わったって言うんです。そりゃそうですよ、参加者にしゃべらせてるわけだから。

この、時間があっという間に過ぎる研修と、だらだらなかなか終わらない研修で、満足度は違うでしょ?

── 違いますね!

コーチングスキルを活用すると研修が変わる!

谷口:あとは、コーチングのスキルで言うと、僕たちは質問したりアクティブリスニングしたり、アクノリッジというのをするんだけど、アクノリッジって分かりますか?承認っていうんですが、コーチたちはそれが上手いんです。

そうすると何が起きるのかというと、参加者の中で、すごく自己主張が強い人って、研修中に質問するんです。「先生、これってこうじゃないですか?」って。

でもこれって、質問の形を借りた意見なんです。質問だけど、「これってこうじゃないですか?」っていう意見なんですね。

そうすると、関係性を共に築かない講師は対抗しようとする。「いや、それはですね・・・」って言うんです。こういうやりとり、なんとなくわかります?。

「いや、それはですね・・・」って。そうすると、「いや、でもこうじゃないですか?」ってまた言う。そうすると、バトルが始まる。

── ありますね。そういう光景。

谷口:ありますよね?でも僕たちコーチはアクノリッジができるので、「これってこうじゃないですか?」って参加者から言われたら、アクノリッジから入る。

「確かにその視点は僕は見落としてました。気づかせてくれてありがとうございます。」そう言われたらどうですか?

── 見る目が一気に変わりますよね?

谷口:こいつ上から攻撃して来ないぞって思うわけです。

「いやぁ~、それ見落としがちなんですよ。」とか、「○○さん、その質問、他の人もしたかった質問だと思います。代わりに言ってくれてありがとう。」と言って、参加者をリスペクトしたり、アクノリッジするのが上手いんです。

こんなふうに、コーチができること、普通にパーソナルコーチングでできることを、他の研修講師たちはしてないということです。

なので、それはすごく有効だったり、なぜ満足度が高いかというと、簡単に言うと、研修の間、セミナーの間、僕は参加者をコーチするし、参加者同士でコーチしあう構造にしてるんです。

それもなるべく有益なコーチングを、コーチングを習っていない人もできるようにしてあげている。どういうことかというと、僕の資料の中に、たくさん質問集っていうのがあるでしょ?それを印刷して持っていって、隣同士で、「部下が相談に来たら、上司役の人はこの質問をしてあげてもらえますか?」って道具を与えるんです。使う道具を。

そうすると、全くコーチングを勉強していない上司役の人が、コーチっぽく部下の相談に乗れちゃうわけです。道具があれば。だから、すごく有益なロールプレイ、エクササイズができる。

 でも、道具がなくて、「部下が相談に来たらコーチング的に質問してあげて下さい。」と言って、ロールプレイをやるとグダグダな質問します。だから満足しないんです。上手くいかないから。

これも、「まずはだまされたと思って、台本通りにやってみて下さい。」っていうツールも渡すので、参加者同士のコミュニケーションも効果的なコミュニケーションになるようにしてるんです。

すぐ使えるツールもあれば、参加者はアクノリッジされるし、共同体で共に作っていけるし、そういったものが全部網羅されて、今までの研修とは違うって言われて、もう指名でリピートが来る。

── そういうことだったんですね。すごくよくわかります。こんなお話聞いてたら、もうこれからは、研修やセミナーを受ける時には、その方がコーチであるかどうかもまず確認してみよう、と思っちゃいました。

谷口:確認してみたらいいですよ。

── それでずいぶん違いますもんね。

谷口:全然違います。だって、情報だけを得るために教わる必要はない時代だから。情報は検索すれば十分。

── そうですよね。本当に情報はいくらでも、谷口さんがおっしゃる通り、インターネットで検索すれば手に入る時代ですからね。

谷口:研修に参加するときにはみんな、「面倒くさい」とか、「また研修でつまらない時間過ごさなきゃいけない」とか、「仕事が溜まってる」という状態で来るわけです。

でも、終わった時に、「いや、先生、来てよかったわ!」と言われる状態にしたら、期待値を実感値が超える。

だから、「今まで受けた研修の中でベスト1でした。」ってアンケートでよく書かれるんです。

── 虎プロの卒業生の方たちが、谷口さんのされることをそのまま真似るようになったら、すごく評判が良いとおっしゃているのは、こういうことだったんですね。よくわかりました。

地域の教室から段階的に広げていく

谷口:だからコーチをしている人は、セミナーをするといい。虎プロに来ている人たちも、はじめはそれこそ僕がやったように、地域の公民館じゃないけど、生涯学習とか行政がやっているような「○○教室」みたいなのとか、そういうところでコミュニケーション教室とかをやった。

すると、そこから本当に一歩ずつ階段を上るように、カルチャーセンターに行く、そして自分で公開の講座、セミナーを主催してみる、自分の地元の会社の研修をやってみるとなっていく。

あと、いろんなコミュニティに入ると、みんなコミュニケーションで困ってるから、コミュニティの人たちから、「コーチングやってるなら、うちでも勉強会開いてくれない?」と言われることって結構あるんです。

そういうところから、数人の人前でセミナーをやる、講師をやるっていう実績を積んでいったら、どんどん上がっていく。大企業の研修講師をやるようになったら、すごく経営は安定してきますね。

── 経営という意味ではすごく安定しますよね。

谷口:コーチとしてはね。必ず毎年受講生が生まれてくるんだから、大企業で。新任の管理職は必ず生まれるでしょ?

── そうですね。

「伝承」に込めた思い

── 谷口さんは、令和になって虎プロを、『虎プロTHE伝承』という形でスタートされたわけなんですが、こちらでは谷口コーチがされていることをなんでも真似してやっていいよっておっしゃるだけじゃなくて、研修講師のための特典もたくさんつけられていて、さらに講座で使われている質問集などのたくさんのツールも全部オープンにされています。

これらは編集もできるようになっていて、これを使ってどんどんアレンジできるようになっている。まさに『伝承』という言葉にふさわしい、とにかく谷口コーチが持っているものをみんなが得て、それをどんどん次の世代に伝えていく、「今できることを何でもやっていったらいいよ」という、谷口コーチの想いが詰まっている講座です。

この講座を受講して、それを実際やってみたら効果がある、評判が良いのはなぜなのか、今日のお話を聞いて、その構造といいますか、その仕組みがよくわかりました。

この『ザ・コーチTV』はコーチとしてご活躍されている方もご覧になっていますが、これから自分もコーチとして、プロとして一歩もっと踏み出していきたいっていう方もたくさんご覧になっていただいていると思いますので、ぜひ谷口さんがお伝えになることを参考にしていただいて、周りの方に伝えていただけたらいいですね。

谷口:研修講師の世界では、すごくクローズする人がいるんですね。自分の内容を取られたくないというか。このコンテンツは僕のオリジナルだから真似しないでくれ、みたいなのが結構多いんですね。

── それが一般的だと思います。

谷口:パワーポイントや資料は渡さないとか、一度渡しても回収して持ちかえらせないとか、それは俺のコンテンツだから勝手に使うなとかあるんだけど、僕がいつも思ってるのは、自分から一度外に出たものは、もう公のものなんじゃないの?ってこと。

だって、僕だっていろんな本を読んだり人の話を聞いたものを編集して、こう伝えたらいいなとか思ってるから、ゼロからじゃないんですね、全部。だったらみんなでシェアした方が良いんじゃないかと。

僕のロールモデルになった人は、『奪い合えば足りず、与え合えば余る』っていう名言を残している。出した方が増えていく。奪い合ったりクローズしたらどんどん減っていく。だったら公にしてどんどん使ってもらったらいい。

僕がクローズして自分がやろうと思っても、僕一人で提供できる量なんて限られるじゃないですか。1年は365日しかないし、体は一つしかないし、時間は24時間しかないし。

でも僕のものを使ってもらって、日本中でいろんな人がやってくれたら、同時に僕のノウハウを届けられるっていうことでしょ?そしたら一人でやるよりよほどいいんじゃないかなって。一生を通じても、自分一人じゃやりきれないからね。だったら渡しちゃった方が早いやと思って、「伝承」っていう形で。

この前の第1期の人たちも、すでに研修講師をしている人が何人もいました。

僕はパーソナルコーチングの内容で説明してるんだけど、時々「研修ではこういう言い方しているんだよ。」というのも講座中に言ってるんです。

なので、すでに研修講師している人が、「谷口さん、これすぐに研修で使えるわ。」っていうのを休憩中に言ってくる人がいますよ。だから僕、「でしょ?これ使ってね。」って。

なので、こうやってみんなが広めてくれたらいいかなって思ってます。

── 経験に基づくお話をありがとうございます。今日のお話も、私たちの行動を促してもらえるアドバイスがいっぱいあったと思います。本当に今日もありがとうございました。

谷口:こちらこそ、いっぱい広めてくれてありがとうございます。

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