プロコーチのアクノリッジとは?【コーチングスキル解説編】 #83
―― 今回は「アクノリッジ」についてです。
コーチングのスキルの一つに「アクノリッジ」がありますが、効果的な「アクノリッジ」を行うためのポイントを教えてください。
谷口:まず、アクノリッジする目的は何か、何のためにアクノリッジするのかを考えてみましょう。
クライアントさんがゴールに向かって歩いていくと、僕はエネルギーマネジメントと言って、推進力=上がろうとする力と、抑止力=抑えようとする力、あとは恒常性=止めちゃう、諦めちゃう、元に戻ろうとする力が働く、という言い方をよくするんですね。
ゴールに向かう最初の頃は、やる気も元気もあって進む。登山を思い浮かべてもらうといいので登山で例えましょう。ある山に登ります。スタートします。歩き出しました。元気よく歩いています。
「楽しみだなー!頂上はどんなんだろう?きっといいことがいっぱいあるだろうなぁ」と歩きだす時は、やる気も元気もいっぱいあります。諦めたり止まったりする気持ちは全然ないです。引き留めようとする力も働きません。
そして1時間歩きました。スタートした時と今とで、僕の状態変わりそうじゃないですか?
―― 疲れてそうですね。
谷口:疲れて来るよね。やる気も元気もちょっと「はぁ~どうしようかなぁ」とか。あとは「足痛くなっちゃったなぁ」とか「靴擦れしてきたなぁ」みたいなの、ありますよね?
次、「どうしようかなぁ。半分来たけれども帰ろうかなぁ。」とか「ここでやめようかなぁ」みたいに思うじゃない。そういう時に有効な方法の一つがアクノリッジなんですね。
簡単に言うと、僕たちは消耗するってことです。あとは、状況が変わるってことですね。特に消耗した状態のクライアントさんに有効なのがアクノリッジ。
では、一人で歩いて消耗した時に何をするでしょうか?
あなたが登山をしてます。元気に歩き出しました。体調もいいです。足もいたくないし、靴擦れも起きてないし、元気いっぱいです。
でも1時間歩きました。なんかやめたくなっちゃったし、つらくなったし、足もいたくなったし、靴擦れはしてきたし、やる気や元気は無くなってきました。
リュックサックを背負ってます。開けてみたら、絆創膏もあるし、湿布薬も入ってるし、地図も入ってるし、おにぎりがあるし、カロリードリンクやゼリーもあります。元気がなくなったなぁ、やる気がなくなったなぁ、という時にあなたならどれを手に取りますか?
―― おにぎりとかですね。
谷口:おにぎりとかチョコレートとかですよね。やる気や元気のない時に絆創膏じゃないよね?絆創膏やシップは障害を取り除く時ですね。それには違うコーチングの方法があるんですよ。
でも、元気がなくなった、エネルギーダウンしたという時には、「じゃあちょっと休んでおにぎり食べようか。栄養ドリンク飲もうか。」と言って、「よし、元気出たぞ!」ってまた歩き出すでしょ?この、おにぎりや栄養ドリンクになるものがアクノリッジなんです。
なので僕たちがコーチをしている時に、順調にいってる時には別にコーチはクライアントにアクノリッジする必要はないですよね。
でも、落ちてきている時とか、順調だったんだけどグッとエネルギーが落ちる時にはカンフル剤のようなアクノリッジが必要ですね?
もう一つ。山を登っていきます。そうすると徐々に減ってないですか?
―― 徐々に減ります。
谷口:減ってきますよね。そうしたら毎回ちょっとずつ減ったものを足していくのもアクノリッジなんです。
カンフル剤のように落ちてガンっと補充するアクノリッジもあれば、ちょこ、ちょこ、ちょこ、ちょこっといって、少し減ったら補う、少し減ったら補うようにしていくのもアクノリッジ。
前提はエネルギーやモチベーションがダウンしてるのを補充したり、チャージするっていうのが目的になります。
そうやってエネルギーやモチベーションが維持できれば、ゴールまで頑張って行動し続けることができるようになるからなんですね。まずこれが目的です。
アクノリッジの方法とは?
谷口:では、アクノリッジの方法はいくつかの種類に分かれてるんですけど、まず日本語で言うと成果承認。結果を承認する。成果を承認する。それと存在承認っていうのがあるんです。
成果承認というのは成果だから、成果が出たときにしか出来ないんですね。例えば、あるクライアントさんが100人のお客さんにとにかくセールスをやる、と言ったとしますね。
そしたら、「谷口さん、100人目にセールスのメール送りましたよ!」と言ったら、「いやー頑張ったね!よくやったね!やり遂げたね!」というのは成果承認ですね。
存在承認っていうのは、その存在そのものを認める、なんですね。では、あなたがクライアントさんだとして、僕にコーチングの電話をかけてきたとします。
「谷口さん、こんにちは。」って声かけてみてもらえます?
―― 「谷口さん、こんにちは!」
谷口:「あ、こんにちは。」という時と、もう1回声かけてもらえます?
―― 「谷口さん、こんにちは!」
谷口:「やぁ、こんにちは!待ってましたよ!」という時で、自分の満たされ感って同じ?それとも違う?
―― 違います。
谷口:前者と後者では、どっちの方がちょっと足されそうですか?
―― 後者の方ですね。
谷口:どっちの方が、ちょっと足されそうですか?前者と後者。
―― 後者の方ですね。
谷口:ですよね?何も褒めてないですよね?ということは、「あ、自分を待ってくれてたんだ!」「僕の(クライアント)の声を楽しみにしてくれてたんだ!」というだけで、ちょっと足されるんですよ。
だからほんのちょっとの第一声だったりうなずきだったり表情だったり「楽しみだったよ」という言葉そのもので、少し減ってるのがちょっと満たされる。こういったもの。
例えばレスポンスを早く返すだとか、笑顔で迎え入れるとか、楽しみだったような声で反応するとかっていうのが存在承認なんです。
よくアクノリッジというと、何か誉め言葉をいっぱい言わなきゃいけないと思ってるんですね。そうじゃなくて、反応そのもの、声のトーンで、相手が少しずつ少しずつ満たされていく。常に補充されている状態が存在承認かな。
あなたの周りに、「あの人といるとなんか知らないけどいつも元気になるんだよなぁ」みたいな人いない?
―― いますね。言葉掛けが上手な人とか。
谷口:その人はあなたの存在の承認をすごくしてくれてる人なんじゃないかなって思います。
ですのでアクノリッジを上達したければ、何のためにやるのか、クライアントさんがどういう状態になったらするのか、そして方法には何があるのか、具体的にはどうすればいいのか、というのがわかると多分のアクノリッジがすごく上達しますね。
ちょっと自画自賛だけど言ってもいい?「谷口さんといると何か元気になるよな!」と言われるケースって結構多いんですね。
それは何かって言うと、すごく笑顔で挨拶をしたり、近づいていったり、名前を呼んだり、期待をしたり、共に喜んだり、嬉しがったり、ありがたがったりすることはすごく意図的にやってます。
そして、自然とそれが出来るように自分も成長していこうと思って今になったんで、そんなところをちょっと考えながら。日常でできますからね。アクノリッジ上手ってすごく人から好感を持たれますよ。ですので普段から練習することをおすすめしてます。
谷口コーチからあなたへの質問
あなたが元気を取り戻したアクノリッジの言葉にはどんなものがありましたか?
谷口:視聴者の方にちょっと質問をしたいなぁ。自分の人生で、成果承認でもいいです、存在承認でもいいです。この一言やこの関わり方で、自分はもう一回頑張ろうと思えた、元気になれた、という一声や態度や関わり方は何かなかったでしょうか?
ぜひ、「私はこんな一言で、誰々からのこんな言葉でもう一回頑張ろうと思いました!」みたいなのをいっぱい書いてもらうと他の人の参考にもなるのでね。
あなたが元気を取り戻したアクノリッジの言葉にはどんなものがありましたか?ぜひ書いてみてください。