【コーチング】本当のアクティブリスニングの意味とは? #77
―― 今回は「アクティブリスニング」についてです。
コーチングのスキルとして、アクティブリスニングや傾聴という言葉はよく耳にするのですが、傾聴や積極的傾聴という言葉から、私たちが認識している「相手の話をしっかりと聞く」という意味合いと谷口コーチがプロコーチの方たちに教えられているアクティブリスニングの意味合いが全く違うというか、一般的な理解と大きくレベルが異なるように思います。
プロコーチとして身に付けるべき本当の「アクティブリスニング」とはどういったものなのでしょうか?
谷口:まず「アクティブリスニング」というのは造語だということです。なので「アクティブリスニング」って調べても辞書では出てこないんです。
インターネットで調べると「最初に唱えた人は誰誰です」みたいに出てくるんですけど、「アクティブリスニング」というのを最初に唱えた人は、たぶんカウンセラーの何とかさんなんですね。それを日本語に訳して積極的傾聴と。だからアクティブとリスニングを分けたんですね。
傾聴っていいますよね?「積極的」だから、すごく一生懸命傾聴しているってことかな?
目次
一般的な「アクティブリスニング(傾聴)」とは?
谷口:ぜひ面白いので(辞書で)引いてみて欲しいんですけど、「傾聴」を引くと、「注意深く相手の話に耳を傾けて、相手のことを共感し、理解してそれを示すこと。」と出てくるんです。だから目的は共感と理解ですね。これの主語って誰だろう?
―― 「私が」ですか?
谷口:そういうことです。聞き手が主語ですね。聞き手が共感する、聞き手が理解をする、で相手にそれを示す、話し手に示すんですね。
「あー、大変だったね。」「そうだったんだ。」「頑張ったね。」「辛かったね。」「言ってることはよくわかるよ。」って言ってもらうと、相手ってどんな気持ちになると思います?
―― 「聞いてもらって良かった!」とかでしょうか。
谷口:「良かったなぁ」とか「そうなんです!」みたいにならない?「ありがとうございます!」みたいに。
つまりカウンセリングなんですね。だってカウンセリングの対象者は、聞いてもらって共感してもらって私のことを理解して欲しいって思うからしゃべるんですよね。
だから共感や理解を示す。そうすると話し手は、「あー、聞いてもらえてよかった!」となるんですね。満足するってことかな。「傾聴」とはそういう意味なんですね。
でも僕はなんか違うんじゃないかなぁと思っていて、色々と調べたり、コアコンピテンシーを読むと、「共感や理解を示す」なんて書いてないんですよ。
なので僕自身で紐解いてみました。まずアクティブとリスニングが造語だということは、元々は別の意味なんですね。
「アクティブ」と「リスニング」を別々に紐解くと?
谷口:(辞書を引くと)アクティブというのは「積極的」って出てきます。もしくは「能動的」も出てきます。能動的をさらに紐解いていくと、「仕向ける」という意味や「促す」という意味が出てくるんです。
ということは、アクティブだけを切り取ると、ある方向に話を仕向ける、ある方向の話を促していく、それに働きかけるっていう意味が出てくるんですね。
だから僕は「積極的」というよりも「能動的」に変えたんです。
積極的というのは「耳を傾ける」ですよね。能動的というのは「働きかける」っていうことです。
どういうことかというと、「それ興味深いな、もう少し教えて。」とか、「それってどういうことなの?なるほどね。」って言うと、働きかけてるんですね。もっとその話を引き出そうみたいな。それがアクティブです。
そして、リスニングって何かなぁ?と思ってこれも紐解いていくと、「識別する」とか「感じ取る」という意味が出てくるんですね。なので共感なんでしょう。辛さを感じ取ったり。
でも「識別する」の方が僕は面白いなぁと思っています。
どういうことかというと、クライアントさんが話しているということは、外へ発信してるんですね。それを高感度のアンテナでキャッチして、それを識別していくということをコーチはやってるんだろうと思って、2つに分けてみたらすごく僕の中で腑に落ちたんです。
ぜひこれも調べて欲しいんですけど、日本語で「きく」っていう漢字を調べると面白いんですよ。僕調べたんです。門構えの「聞く」って出ますよね。門構えの下に耳と書いて。
次が、傾聴の「聴」と出てきます。耳へんに十四の心とかく。これで傾聴なんですね。で調べると、門構えの「聞く」というのは、音が耳に入ってくる。
例えば「あれ?今日鶯が鳴いたね。もうすぐ春かぁ。」みたいに、聞こうと思ってないけど音の情報が入ってくるってことですね。
初めて耳へんの「聴く」で、注意深く耳を傾ける。だから本当の人の話を聴くはこの耳へんじゃないかなと僕思ってるんですけどね。
次が訊ねるです。尋問に使う。
だから道を訊くとかいう時の「訊く」ですね。これは日常会話でやってますよね。何となく聞こえて来たり、注意深く聴いたり、お客さんの話聞いたり、あとはそれって具体的にどういうことですか?って訊ねたり。これはやっています。
次が、利用の「利」という字が出てくるんです。利き酒師の「利く」みたいな。この字を紐解くと、「識別する」と出てくるんですね。
例えば、五感を使っていろんなものを識別して感じ取ってそれを分けられる能力が優れている人の職業って思い当たりますか?
味覚も視覚も嗅覚も触覚も聴覚も。全部じゃなくてもいいですけど、耳だけじゃないってことです。識別して「あぁこれはこうだね!」って識別できる人の職業。
―― さっきおっしゃった利き酒の人とかですか?
谷口:そうそう、利き酒師なんかそうですよね。これ新潟のお米だねとか、山田錦だねとか、当てられるわけでしょ?僕なんかできないじゃないですか。
ソムリエなんかもそうですよね。色を見て「あぁ、これはどこどこのブドウ」とか、味を含んだり、匂いを嗅いで、シャトー、産地まで当てるんですね。僕たちはできない。でも人間にはそういう能力があるってことですよ。
だから僕たちもコーチも、いろんなクライアントが発しているものを今みたいに識別していく、区別していく、キャッチアップできるっていうのはこの利用の「利」なんです。
次が、釘が効いてるとか、薬が効いてるという効果の「効」ですね。これがある働きかけによって期待通りの結果が表れるってこと。なので釘は摩擦によって止めてるでしょ?薬は成分によって血圧を下げてるでしょ?というのが「効く」。
日本語の「きく」ってすごいなぁと思ったんです。
コーチングのアクティブリスニングとは?
谷口:コーチングの「きく」は、最後の2つ。利用の「利」と書いて識別すると、効果の「効」と書いて、働きかけて効果を発揮する。だとすると、アクティブってどっちの字だと思う?利用の「利」か、効果の「効」か。
―― 効果の「効」ですか?
谷口:そうそう。能動的だから働きかけてるんでしょ?
なので、リスニングが利用の「利」なんです。識別してるんですね。だから僕たちのコーチングでは、共感や理解を相手に示すことではなくて、能動的にうなずいたり、問いかけたりして働きかけて、クライアントに効果を促していくように聞いたり、発信しているものをキャッチする。
「なんか二極化思考に囚われているだけどなぁ」とか、「口ではやるって言ってるけど、どこか不安があって恐れているような感じも届くんだけど」みたいに識別してるんです。
この2つを同時にやって、クライアントにとって最適な情報を聞きながら戻してあげる。
クライアントは話しながら気づく、コーチから聞き取ったものを返してもらってさらに発見する、そして結果的に自分の情報を増やして自分がよりいい方にコントロールして行動できるように支援するのがアクティブリスニングなんですね。
なので、カウンセリングとまるっきり違うんです。
ちなみに、自分の内側で起きてることや、頭の中にある考えとか情報って、全くしゃべらないで、どれぐらい自覚できそうですか?
―― アウトプットせず、しゃべりもせず、書きもせずだと、ボヤっとしたままかもしれないですね。
谷口:たぶんほとんど認知できないんじゃないかな。
でも人間って喋りながら「あぁ、それそんなこと考えてたんだ。」とか、「確かにそういうことあるよなぁ。」とか、自分でしゃべりながら自己認知していきませんか?
―― そうですね。
谷口:ということは、聞き手が知るってことですよね。積極的傾聴と言っちゃうと、傾聴とは共感と理解を示して相手にそれを示すこと。
なぜなら話し手は共感して欲しい、理解して欲しいというニーズを持ってるから。なので主にここで有効なのは、僕はカウンセリングの領域だと思う。
でも、僕たちコーチは共感や理解ではないです。気づきだから。自己認識、自覚を促していって、自分の頭の中に考えていることや見失ってることや自分のメンタリティや自分のエネルギー状態をコーチに話すことによって、結果的に自覚することが目的なんですね。なので全く別物です。
だから僕は積極的傾聴って言うと、「うーん、ちょっと違う気がするんだけどなぁ・・・。」みたいに思ってるんですね。
谷口コーチからあなたへの質問
話したことによって、その話した人に起きる良いこと、効果には何があると思いますか?
谷口:これも視聴者の方に考えてもらいましょうか?
これを見ている皆さん。すごく話しやすい人がいるとします。話すとどんどんどんどん自分の話が外へ出ていく。気が付くと1時間も2時間も自分のことをしゃべっていた。すると、その話した人に起きる良いこと、効果には何があると思います?というのをぜひコメント欄に書いて欲しいんです。
バァーっと話したことによって話した人に起きる良いこと。ちなみに、あなたがバァーっと話せた時に、あなたに起きる良いこと、何か1個思いつかない?
―― アイデアが湧くとかですかね。
谷口:ね?これ良いことの1つじゃないですか。そういうことをコメント欄に書いてもらったらうれしいかな。