コーチがセミナー講師に向いている理由 PART1 #47
── 谷口さんは以前から、「パーソナルコーチングができる人はセミナー講師や研修講師にもなった方がいい」と言われていますよね?
実際に、谷口さんご自身も、コーチングビジネスの中の柱の一つとして、企業研修やセミナーをされていて、受講生の満足度がとても高くて、すごく評判が良いと聞いています。
中には、もう何年もリピートされている企業や団体の方も多いと伺っているんですが、今日は、企業研修とセミナーのプロフェッショナルでもある谷口さんに、『コーチングとセミナー』というテーマで、いろいろなお話を伺っていきたいと思います。
まず最初に、谷口コーチが『企業研修やセミナーをするようになったきっかけ』について伺いたいのですが、いつごろから、何がきっかけで企業研修やセミナーを始めることになったのでしょうか?
研修を始めるきっかけとなったこととは?
谷口:何がきっかけか?っていうと、いろんなものが全部きっかけになったと思うんですけど、まず覚えてるのが、1990年代だから僕が30代のとき、僕はあるハウスメーカーでセールスマンをやってたんですね。
会社には、大卒の新入社員が入って来ますよね?その新入社員がセールスという舞台に入って来ると、よくいう新入社員研修のほかに、セールステクニックを教えるセールス研修っていうのがあるんです。
プレゼンとか、クロージングとか、お客さんを探すとか、いろいろセールスマンが覚えなきゃいけない能力やテクニックの研修がある。
それを、それまでその会社では、外部の会社に委託してたんです。新人を研修所などに送り出して、外部の講師がセールスを教えていたんですね。
それを、内政化しようという動きがあって、簡単に言うと、社内の講師が新人にセールスを教えるようにしようという動きがあって、売れてるセールスマンに声がかかったんです。「社内講師をやってくれませんか?」って。
そういう話が社内であって、人事が主導でいろいろやっていて、僕がその候補の一人にあがったんですね。その時、僕はまだ管理職になってなかったかな?
僕たちセールスは、成績によって収入が決まるから、若手に教えてもそれは収入には直接つながらないでしょ?それに手当てが付くわけではないので、時間は取られる、セールス時間は取られる、けど収入は増えない。
多くのセールスマンは稼ぎたい人が多いから、ほとんどが「そんなのイヤだよ」って断ったんです。
でも、僕はいいですよ、と言った。
それから、毎年新入社員が入って来ると、僕は教育担当として、セールスを教えることになったんです。
講師になりたいと思ったきっかけとは?
谷口:その教育担当になる前だったと思うんですけど、僕はいろいろ悩んでいました。
将来どうしたいかなぁ、とか悩んでた時に、『7つの習慣』というコビー博士の本と出会って、初めて自腹で『7つの習慣3daysセミナー』みたいなのに行きました。30代なので20数年前だと思います。
たしか、当時で12万円だったと思います。当時からすると結構いい値段でした。今だったらもっと何十万もする講座ありますけど。
当時は会社で研修を受けることはあったけど、自分でお金を払ってセミナーとかワークショップに行くっていう概念がなかった。
そのセミナーに行くと、そこにセミナー講師のようなファシリテーターがいたんですね。7つの習慣を教えてくれる人たちで、日本語を話せる外国人の人でした。
僕は、その3日間のセミナーにすごく感動して、セミナーが終わった時に、セミナー講師である外国人の人のところに行って、「僕もあなたみたいな仕事がしたい!どうしたらなれる?」って聞いたんです。
感動して、「こういう仕事したい!僕も!」って思ったのがきっかけと言えば、それがきっかけだし、その社内のインストラクターになったのがきっかけと言えばきっかけで、
その時は漠然とだけど、いつか将来人に何かを伝える、教える仕事に就きたい、と思ってたのも小さいきっかけかも知れない。
もっと遡ったら、僕は高校の時の将来なりたい仕事が学校の先生だった。当時、学園もののドラマが流行っていたので、先生っていいな、感動するな、と思っていたのが、もしきっかけと言ったら、その高校の時のがきっかけ。
人生の中で、きっかけはいっぱいあったと思うんだけど、実際セミナー講師や研修講師っていうものの直接的なきっかけは、たぶんその『7つの習慣』の3daysセミナーに出て、僕も前に立ってこういう講師をやりたいと思ったのと、新人が入ってきた時に教えるのがすごく楽しかった。
それがきっかけかな?
企業研修やセミナーを始めた時期は?
── その後、谷口コーチはコーチングに出会われて、会社を辞めてプロのコーチとして独立をされていくわけなんですが、コーチとして独立したての頃は、最初から企業に向けての研修とかセミナーはされてなかったんじゃないかと思うのですが、最初はやはり、パーソナルコーチングからスタートされたのですか?
谷口:もちろんパーソナルコーチングでスタートしましたが、僕は2003年に独立しているんですけど、起業研修も2003年か2004年に、やってはいるんです。
── そうなんですか?独立してほんと1年ぐらいで企業講師をされていた?
谷口:セミナーもやってる。
── それはどんな経緯だったんでしょうか?
谷口:まず、コーチングという世界を知って、コーチングの有効性も知って、それがすごく人材育成に有効だっていうのを確信したんですね。
その前に新人の教育もやっていたので、たぶん人の育成にすごく興味を持っていたんだと思うんです。
じゃあ、自分がいる現場はどうかというと、セールスの世界って、人を育てるのが苦手な世界なんです。教えるより見て覚えろだから。セールスマンって、自分の売り上げだから、人を育てても収入は増えないんです。
どちらかというと、せっかく新人をいっぱい採っても、なかなかうまく育てられないのがセールス現場、会社の実情であったんですね。
その時に、僕がコーチングをしながら自分の営業チームの部下育成をしたらすごく伸びたということが、周りではなんとなく評判になってたんです。
当時、お世話になっていた、直接の上司ではない他の事業部の事業部長さんが、
「谷口、お前は人を育てるのが上手いな。」と言ってくれて、
「いや、実はコーチングを勉強してて、こういうことやっているんです。」とか言って、そういう話をよくする、会社の恩師みたいな人がいたんです。
会社を辞めた後、恩返しも兼ねて、直接の上司ではないその事業部長に
「マネージャーさんたちがコーチングを勉強すると、たぶん新人も育つし、部下も育つし、結果として、事業部の売り上げが上がるんじゃないか?」と提案して、
「ぜひそれをさせてもらえないか?」と言ってみました。
そしたら「いいんじゃないか?じゃあうちで予算取るからお前やってみろ!」って言ってくれたんですね。
ただ、僕はコーチングの研修って、やったことなかったんです。
でも、当時僕がコーチングをしてもらっていた先輩コーチは、研修とかをやっていたので実績がある。
なので、「○○コーチ、僕が元いた会社でコーチング研修をやってくれそうなんだけど、コーチ、実際に行って研修をやってもらえませんか?」とお願いしました。
僕が研修を取ってきたんだけど、やってもらうのは自分のコーチにお願いしたんです。
僕は仕事を取ってきただけ。それで(先輩コーチに)やってもらったら、すごく評判が良くて、それを僕はアシスタントで見てた。
研修の手伝いをしながら。「ああ、こうやればいいんだ。」っていうのがわかった。
そこから、さらに元いた会社の中で、その研修の噂を聞いた仲の良かった他の事業部の事業所長さんから、
「谷口、お前、何々事業部でこういうのをやったんだって?」と聞かれて、
「はい、やりましたよ」っていうと、
「うちでもやんないか?」という話になったんです。
こうして、実際、元いた会社から研修の仕事をもらうようになったんです。
また、住宅業界って関連会社がいっぱいあるんです。設備屋さんとか、工事屋さんとかいろいろあって、やっぱり僕を見ていてくれたある工務店の若い社長さんがいたんです。
僕は、その会社の中で勉強会とかをよくやってたんですね。工務店の社長さんにエクセルの使い方とか。まだ手書きで鉛筆なめなめ見積書作っていた時代ですからね。
「こういうふうに、たったこれだけ作るだけで数字入れれば簡単に合計出ますよ」とか言って、アフター5にオヤジさんとかにパソコンの使い方とか教えていたんです。
他に、リフォーム会社の若手のリフォーム営業マンには、ちょっとしたセールステクニックとかを教えてて、当時専務から、「あれ、谷口学級だな」とか言われていました。そういうのをやってたんです。
そしたら、会社を辞めてから、そういう普段の僕の姿を見ていたその若い工務店の社長さんが、もう会社を辞めたんで、
「谷口さん、うちの工務店の営業マン5人いるから、この子たちに教えてくれないか?」っていうものも来た。
そうやって、研修とかをぼちぼちやりだしたんです。そのベースになってたのは新人教育をやっていた時の資料やツールだったんです。
最初は地域の教室でのセミナー講師!
谷口:セミナーをするきっかけは、僕の仲間が2時間くらいのコーチングのショートセミナーみたいなのをやってたんですね。「今日は質問」とか、「今日は傾聴」みたいにして。
僕はまだまだ駆け出しだったので、お金払って受けにいきました。どんなことやってるんだろう?って。
そしたら、公民館みたいなところで、「コーチングとは?」とか、「質問とは?」とかやっているわけです。
「ああ、こうやるんだ」って。「あれ?僕にもできそうだな」と思ったんですね。
それから、最初に、自分が住んでいる市役所に生涯学習課というのがあって、簡単に言うと地域学習みたいなもの。公民館で押し花教えますとか、公民館で書道教えますとか、そういう地域の教室みたいなのがあるじゃないですか。そこに講師登録をして、親子のコミュニケーションみたいなものの自前のセミナーをやったりしました。
あとは、カルチャースクールってありますよね?カルチャースクールの先生って、僕はすごい高根の花というか、すごい世界だと思ってたんですね。
ところが、カルチャースクールで講師をしている先輩に話を聞いたら、「カルチャースクールって先生募集してるよ」って言うんです。「え?」って思って行ってみました。
そして、「親子のコミュニケーションっていうのを僕やるんですけど・・・」と話したら、
「あぁ、ぜひやりましょう!」って簡単に採用されちゃったんです。
だからカルチャーセンターでも親子のコミュニケーション、地域の生涯学習センターでも親子のコミュニケーションみたいなものを、もう最初の頃からやりだした。
でも、本業はパーソナルコーチングなんです。
それこそ人数は少ないですよ。手弁当の親子のコミュニケーションって公民館の会議室でやったけど、一人とか二人の受講生しかいないというものもいっぱいありました。
── 谷口さんにもそういう時代があったんですね。
谷口:参加費は100円でした。ワンコインセミナーとか言って。
そういうのからスタートしたから、メインはパーソナルコーチングでしたけど、人前でといったら、独立した時からちょっとずつですけど、カルチャーセンターだったり、元いた会社だったり、行政の生涯学習センターみたいなところでぽちぽちやり始めた。
── そうだったんですね。最初はパーソナルコーチングをメインでされてたということですが、今はマスターコーチになられて、現状はパーソナルコーチングの方はいっぱいなのでほとんどお受けにならない状態ですよね?
逆に今は、企業研修やセミナーの方に重点を置いてらっしゃると思うんですが、振り返ってみて、その割合が少しずつ変わってきたきっかけといいますか、どのあたりから割合が変わってきたのでしょうか?
谷口:もしあるとしたら、これもやっぱり海外の先輩コーチですね。海外のコーチたちがいろいろ来て、ワークショップとかセミナーとか講演を聞く機会が、18年くらい前はいっぱいあったんです。
すごく覚えているのが、コーチはクライアントからもらうコーチングfeeだけでビジネスをしない方がいい、という話があったんですね。
複数のキャッシュポイントを持つ
谷口:複数のキャッシュポイントを持った方がいい。なぜなら、クライアントからの収入だけで自分のビジネスを成り立たせようとすると、クライアントの成果に依存してしまう。ニュートラルに関われない。
依存しちゃうと、『なんとかしてクライアントを成功させなきゃいけない』っていうふうになるからです。
ニュートラルとは=対等な関係性ということです。
別の例えしましょうか?
例えば、僕が会社の経営者で部品を作っているとしますね。下請け会社だとすると、1社からだけに注文をもらってると、その会社に自分の経営が依存されちゃいますよね。
── もうどっぷり依存されてますね。
谷口:だから、本当はこうした方がいいと思ってもなかなか言えない。なぜかというと、この元請けから切られたら食っていけないから。
でも、そこだけじゃなくて、数社からいろんな違う部品の契約をしてて、A社が3割、B社が3割、C社が3割となっていたら?
一つだけに依存していないと、もっとこういうことをしたい、もっとこういうことをしたい、もしかしたら、A社とはもう関係が共に築けないかもしれない。
でも、それがお互いにとってその方がいいと思えたら、大丈夫。B社もC社もあるから。
たとえ一旦収入が減ったとしても、A社に依存しなくてもいい、っていうふうになるでしょ?
それと一緒なんです。
クライアントにだけ依存しちゃうと、どこか迎合してみたり、依存してみたり、コントロールしたくなったりするので、キャッシュポイントはいくつか持った方が良いっていうのがその先輩の教えだったんです。
── 確かにそうですね。
谷口:パーソナルコーチングからの売り上げがどれくらいで、企業研修の売り上げがいくつで、次にセミナーが、というふうになると、自由にと言ったらいいのか、どこかに依存したり迎合しなくてすむので、よりビジネスがどんどんどんどん発展できるようになるよ、って教わったのがきっかけかな。
セミナーもやり、研修もやり、っていうもののバランス。最初のイメージは1/3、1/3、1/3。
そういうふうに、複数のキャッシュポイントを持っている、ということでセミナーや企業研修の割合も増やしていきました。
── 今言われた1/3、1/3、1/3という割合も、その後また少し変わっていったとういう感じでしょうか?
谷口:はい、そうですね。
── 「複数のキャッシュポイントがあればいいなというのはよくわかる。でも、どうしても、やっていないことにチャレンジするのは勇気がいるな」という人もいらっしゃると思います。
よく谷口さんは、「パーソナルコーチングができる人はセミナー講師や研修講師もできるようになったほうがいい」、とおっしゃっていますが、それにはおそらく、親和性がいいというか、なりやすい理由があるんじゃないかなと思うのですが。
谷口:その通りです。
── どういうところからそう思われるのでしょうか?
「こういうところに親和性があるからやってみるといいよ!」というようなアドバイスをいただけるとうれしいです。
⇒『コーチがセミナー講師に向いている理由 PART2 ~パーソナルコーチングができる人はこんなに有利!~』に続きます・・・