急成長するコーチング市場で“選ばれるコーチ”になるために必要なことは? #101
―― 今回は「急成長するコーチング市場で“選ばれるコーチ”になるために必要なことは?」というテーマで、谷口コーチにお話を伺っていきたいと思います。
コロナ禍をきっかけに、日本でもここ数年でコーチングビジネスの市場規模も急成長して、大きくなってきたというふうに感じています。それを示すいい事例として、コーチングビジネスを専業とした会社が連続して株式上場を果たしたということが上げられると思います。
谷口:僕が知っているのは確か2社ですね。まさかと思いましたね。いよいよここまで来たかという感じですね。
―― とはいえ、コーチング先進国のアメリカと比べると、アメリカでは2019年時点で市場規模がなんと1兆6000億円にもなると言われていまして、そこから考えると、日本の市場規模もまだまだこれから大きくなっていくんじゃないかなと思っております。
日本では、これからが本格的なコーチング市場の成長期になるんじゃないかなと私は勝手にそう予想しているんですけれども、これから伸びて行くだろうということを表すような事例として、最近いろんな新しい企業が、
例えば、プロコーチのマッチングビジネスとか、プロコーチの紹介プラットフォームを運営されてたり、新しい企業が企業にプロコーチを斡旋するような、エージェント的なビジネスをしていて、いずれの企業も結構業績が伸びているようなんですね。
そこから考えると、谷口コーチがプロコーチとして独立をされた約20年前と比べると、圧倒的に今は、コーチングビジネスというものを生業に、専業のビジネスとしてやっていくということが、とてもやりやすい環境が非常に整ってきているんじゃないかなと感じているんですね。
ですが、このように環境が整ってくると、今後益々、プロコーチという職業が魅力的ということもありますし、プロコーチを目指す人がどんどん増えてくるんじゃないかなと思います。そうなると今度は、本日のテーマの「選ばれるプロコーチになるにはどうすればいいのか?」という問題が新しく生じてくるのではないかと思います。
そこで質問なのですが、コーチングビジネスの黎明期から活躍され続けている谷口コーチが考える、「選ばれるプロコーチになるための条件」などありましたら、ぜひ教えていただけないでしょうか?
谷口:いいテーマですね。これ、コーチになりたい人を集めて3日間ぐらいのセミナーができそうなぐらいですよね。
ですので、ちょっとかいつまんで、僕だったらこう考えるかなっていうのだけ、ちょっと簡単に紹介しましょう。
―― 是非よろしくお願いします。
谷口:まず、今紹介してくれたように、僕が20年前に(コーチを)始めたときは、まず「コーチングって何?」って聞く人がいたんですね。ほとんどがそうだった。
だから、まず認知してもらうのがえらい大変だったんですよ。イメージは得体の知れないものだから。
でも、この認知の時間はもう終わったってことですね。つまり日本市場というか、日本の中でコーチングっていうのはもう認知された。
それまでは、不明なものにはなかなか人間って手を出さない、と言ったらいいでしょうか。フロントランナーというのは大体世の中に2割いるわけです。それが僕たちだったわけですね。
認知されると、その後に追随する大多数の人がいるわけです。「あ、これはいい!」といってワーッと入ってくるわけですよ。
すると今度はどうなるか?認知をしてもらう努力は必要ない。じゃあ今度大変なのが、選ばれる努力ですよね。
世の中にバーッと並んだから、市場というか、コーチやコーチングを必要とする人は、今度は「困った」と。「必要だけど選択肢がいっぱいある。どれを選べばいいんだ?」というふうになってきたということです。
実は、アメリカも遡っていくと、同じ状態が起きたわけです。そうすると、アメリカなんか代表的なんですが、市場は困るんですよ。
どういうことかと言うと、雨後の筍のように、プロコーチ、プロコーチ、プロコーチ、プロコーチといっぱい出てきたわけです。
そしたら市場は「誰に頼めばいいんだろう?」と思って「わかんないけど、とりあえずこの人に頼んでみよう」と頼んでみたら、「ちょっと待てよ」と。「想像してたのと違うぞ。」みたいな。
言葉を選ばないで言うと、まがい物がいっぱい出て来るということです。僕たちは「なんちゃってコーチ」とか言ってるんですけどね。
そういうことが起こった時に、当時アメリカでは、何か信用を担保するものを作らなきゃいけないと言って、国際コーチ連盟で資格というものを用意しました。その資格を持ってることで一つ信用を担保しようということなんですね。
じゃあ、その資格を取るために何が必要かというと、まずコーチングに関する専門知識。それと、行動規範にのっとってプロコーチ活動をしているか?
よく企業でもありますよね。行動規範みたいな、行動指針みたいなもの。次に実績。というのがあるわけですね。
ちゃんと知識があって、連盟が推奨する行動規範に沿って活動していて、実績がある。その実績に応じて資格を、ACC(アソシエイト・サーティファイド・コーチ)、PCC、MCC、マスターという基準を設けたわけです。
なので、市場はどうやって選んだのかと言うと、国際コーチ連盟が保証する人なら大丈夫だろう、といって選んだんです。
人はものが認知されていって選択肢がいっぱいあると、何で選んでいくのかを、選ばれるコーチは知っているということです。
簡単に言うと、まず人は選ぶときに「信用できるか」って選ぶんですよ。
だって、まがい物につかまされたら、騙されたらイヤだって思うわけじゃないですか。だから信用できるかっていうので選ぶんですね。
じゃあ「信用は何によって作られるか?」って今度は考えるわけですよ。
信用は何によって作られるのか?
谷口:例えば、世の中に新しい食べ物が出てきたとして、最初は「これ、食べても大丈夫か?」と思ったけれど、その食べ物を先人たちが食べてみたら、みんな「おいしい」「おいしい」と言って、世の中に出てきたとします。
その食べ物は、A社もB社もC社も個人も出している。
あるところは、もうこれを作って何年ですとか、これだけの人が食べてます、こんな評判もらってます。あるところは、とにかくおいしいです、とにかくうまいです、しかない。
次に商品の裏を見たら、ある会社は成分がこうで何々がこうですってちゃんと書いてる。ある会社をみたら何も書いてない。あなたはどっちを選ぶ?
―― もちろん、きちんといろいろ書いている方を選びます。
谷口:そうだよね。だから人は信用したいんです。その「何によって信用されるか?」っていうのをまず知ってるってことですよね。
代表的なのが、国際コーチ連盟が担保してますよっていうのが資格の提供だから、僕はプロコーチになりたければ、これからはそういう選択をされる、その他大勢の中から選ばれなきゃいけないので、そのためには、国際コーチ連盟の資格ホルダーになることをおすすめします、というのが一つあります。
これは聞いた話ですけど、アメリカではやっぱりいろんなまがい物が出てきたので、もう会社や行政とか政府といったところがコーチを頼むときには、国際コーチ連盟の資格ホルダーであるということがまず最初に条件になるそうです。
だから、このように、ある専門機関が担保してくれるという保証書を持ってるのが良いですね。それが資格。だから国際コーチ連盟の資格を持つと良いですよっていうのが一つです。
なぜかというと、それは世界で証明するから。国内にはいろんな資格があるんですけど、世界基準の資格ホルダーになるっていうことですね。
次、「何をもって信用するか?」の次が、その専門知識。もちろんコーチングの知識もそうですけど、人がいかに行動を起こすか、行動学みたいなのも知ってるといいと思います。
次に、コーチングで言うと、目標を上手く活用する知識とか、時間を最大限、効果的に運用する知識、タイムマネジメント、こういうのを持ってるといいですね。
次に、薬で想像してもらおうかな。お腹が痛くなりました。薬局に行って、お腹が痛いのにすごく効くお腹の専門薬と、何でも効きますという薬では、お腹が痛いときどっちを選ぶ?
―― お腹が痛い薬。
谷口:ですよね。ということは何でも屋より、この専門家というふうに自分をアピールする。これブランディングっていいます。これを極めた方が良いですよね。
僕たちの時は、とにかくコーチングというものが専門性だったのでコーチでいいんですけど、認知されたら何の専門のコーチかというように、対象を選ぶというのも一つです。
あとは、信用されるためには「実績」とか。あとは「評判」。
みなさんも何かもの選ぶとき、今だったら口コミを絶対見ますよね。だから評判とかっていうものを用意しておくっていうのが一つ、「選ばれる」ですね。
選んだといった時、それは信用ですね。次が信頼なんですよ。
信頼を得るためには?
谷口:まず人は「選ぶ」という行動を起こしたら、選んだあとにそれを採用するか、実際に使うか、となるじゃないですか。これが信頼ですね。
コーチで言うと、依頼とか採用と言ったらいいのかな。信頼も依頼も「頼る」という字を書きますよね。ということは、それに身を預けられるとか、任せられるとか、投資に値するとかが基準になるんです。
例えば車。運転する時、命預けますよね?
―― 預けますね。
谷口:ということはその車を信頼してるってことですよね。
では、「なんで信頼できるか?」っていうことを考えたときに、例えばトヨタにしましょうか。
なぜ、トヨタは車という事業をしていて、車を通じて何を成し遂げたいのか?また、トヨタは何を大事して車を作っているのか?その結果こういう車を世に出していて、ということを全部、企業理念みたいなのを作ってないですか?
―― 作ってますね。
谷口:作ってますよね。「確かに、日本に昔からあって、そういう考えに基づいて、車を通じてこういうことを考えてるんだ。そういう理念や基準に基づいて作ってるんなら、まぁきっと大丈夫だろう。」と思って運転するんですね。
でも、僕たちは車じゃないので、何をもって信頼するかと言うと、よくあるのが、その人の考えてること。
プロコーチだったら、プロコーチの考えてることや、普段発信していることだと思いますね。
例えば、トヨタがそういうことを書いていて、裏の世界の団体に寄付していたら信頼する?
―― イヤだなってなりますね。
谷口:そうなりますよね。だから普段の行いとかそういうのを見てるんですね。
ということは、まず僕がよくプロコーチたちに言ってるのは、とにかく自分の信念、自分が正しいと思ってる考えとか信条、代表的なのは、正しいと思ってやり続けていることと、絶対やらないこと、を決めた方が良いですね。信念と信条。
次に、僕たちは人間なので、よく言う価値観とかありますよね。何を持って正しいとするか、というのが価値観ですね。
価値観って別に良い悪いじゃないですよ。でもあるコーチが、目標を達成するためだったら人を殺してもいいという価値観に従って行動してたら頼る?
―― ちょっとイヤですね。
谷口:そういうことですよね。でも世界中にはそういう価値観を持っている民族がいますもんね。だからこういうのを価値観というんですね。
次に、そのコーチがどんなビジョンに向かっているのか。ビジョンですね。
どんな世界を作りたい、どんな理想を作りたいと思っているのか。それを明確に明文化することを僕はすすめているんですが、明文化して、それに沿って正直に誠実に生きるということです。
それで信頼されていくんじゃないかなと思っているんですね。
僕が絶対やらないのは、SNSでの批判とか非難とか、そういうことをしないですし、人に対して必要のない忠告とかアドバイスもしないですし、自分の価値観に沿わない仕事は受けないとか。
だから、裏の社会から「谷口、おまえコーチしろよ、俺を」と言ってボスが来ても「NO!」「そんなこと言ったらお前、コンクリートに詰めて埋めるぞ!」「NO!」って、言えるかどうかですよね。
絶対やらないと決めてること。それで信頼されていく。そして選ばれていくんじゃないかなぁって思いますね。
キーワードは「信用」で選ばれる。
そして、選ばれた後に、ちゃんとそこにお互いに相互依存で、頼る、頼られるだから、契約が成り立つためには「信頼」。この信用と信頼をいかに作っていくか?っていうのをいろんなところでお話してます。
これ、しゃべれって言われたら3日ぐらいしゃべれるんですけどね(笑)
―― もう一つ谷口コーチに伺いたいのが、今日の谷口コーチからのご質問の中で、私がすごく刺さったというか、すごく考えをめぐらさせていただいた質問が、食べ物の事例を出されての質問なんですね。
私は、タピオカを思い浮かべたんですけど、「どこを選ぶ?」と聞かれた時に、自分だったら何で選ぶかなと思った時に、ストーリーだと思ったんですね。
口コミとか、そういうのがない状態で選ぶとなった時に、お店がどういうビジョンとか、どういう経緯でタピオカを扱うようになったのかというストーリー、というかそこの人が見えるとすごく興味が持てると思ったんですね。
例えば谷口コーチのホームページのプロフィール欄!
谷口:僕、年表書いてますよね。生まれてから今日に至るまでみたいに。
―― そうなんです。谷口コーチを振り返った時に、すごくストーリーを出されてると思いまして、やはりそういうのもすごく重要ですよね。
ストーリーの重要性について
谷口:例えば、実績がない時に、人はどうやって選ぶか。「なんかこの人良いな」って思った時に、駆け出しだと実績がないので、実績では信用できないわけですよ。
でも、ストーリーはありますよね。プロコーチは駆け出しでも、プロコーチとして起業する前のストーリーがあって、ストーリーが信用できれば買いますし。
あと、もう一つが「共感」。ストーリーに共感できれば、選んでみようかなこの人を、っていうのはありますよね。
一つ、信用ということの選択の基準の中に「ブランド」ってあるんですよ。
ブランドとは他と区別できるということです。専門性の知識は他と区別しにくいですよね。
例えば、飲食店で言うと、材料はなかなか区別できないですよね。同じものを使えるから。
でも、お店を開くに至ったストーリーは全く同じにできないでしょ。
僕たちプロコーチは一人の人間としてやってるので、その人のストーリーだけは唯一無二なんですよ。なのでブランドになるってことですよね。
その通りだと思う。なぜコーチをしたのか、その人が今に至るまでのストーリーは信用される一つの条件になるだろうなぁ。
―― そうですね。谷口コーチも、課長になられた時に挫折してみたいなストーリーをだされているじゃないですか。全部が成功してたら、ちょっと近づきがたいみたいになるかも知れないですけど、そういうところを乗り越えられてきたという人間味がみえると、すごいな、話を聞いて欲しいな、となると思います。
谷口:もしかしたら選択、選ばれるための条件がいくつかあるとして、絶対欠かせないのがストーリーかも知れないね。実績は駆け出しだったら無い。でも選ばれますもん、それでもね。
まだまだやっぱり、資格も最上位までには到達してない。でも、ストーリーは際立ってたら選ばれる可能性あるもんね。
だから、絶対選ばれるために必要な要素の最重要度って言ったらいいのかな、それはストーリーかも。一番重要で大事なのは。ありがとうございます。その通りだと思う。
―― 谷口コーチのストーリーのページを初めて拝見した時に、すごいなと、ここまで出されてる方はあまりいないなと思いました。生まれてからどういった考えでとか、どういったことを経験されてというのが、情景が目に浮かぶように書かれていたので、谷口コーチが人気なのが分かると思った記憶があります。
谷口:ユニークでしょ?
―― はい!