【AI時代】プロコーチは本当に必要なくなるのか?人間のコーチにしかできないこと

最終更新日:2026年9月30日

―― 今回は、「AI時代に人間のプロコーチは本当に必要なのか?」というテーマで、谷口コーチにお話を伺っていきたいと思います。

ここ数年、生成AIの進化によって、AIに相談をしたり、考えを整理してもらったり、色々なことを調査してもらったりすることが、かなり身近になってきました。ICF(国際コーチング連盟)もAI Coaching Framework and Standards(人工知能コーチングフレームワーク&標準)を公開していて、AIをコーチングの世界から切り離して考えることは難しい時代になっています。

実際、単純に「質問をする」「話を整理する」「振り返りを促す」といったことだけを考えると、AIでもかなりできるようになってきていると思います。そうなると、これからプロコーチを目指す人の中には、「人間のコーチはAIに置き換えられてしまうんじゃないか…」と不安に感じる方もいると思います。

一方で、谷口コーチが主催されている虎プロ(プロコーチ養成講座)では、プロコーチには質問のテクニックだけではなく、プレゼンスやアクティブリスニング、フィードバック力、クライアントとの関係性、そしてコーチングプロセス全体を設計する力が必要だと教えられています。

そこで今日は、AIがこれだけ進化した時代だからこそ、人間のプロコーチにしか提供できない価値とは何なのか。そして、これからのコーチはどんな能力を磨けばAI時代にも選ばれ続けるのかを教えていただけませんでしょうか。

AI時代は全職業人にとっての大転換期

谷口:すごく壮大なテーマですね。でも、確かに避けては通れないもんね。コーチだけじゃなくて全ての職業人にとって、多分避けては通れないよね。歌手だってAIが歌うしさ、映像作家だってAIが映画つくるしね、漫画だって多分きっと描くんだろうな、本も書くわけでしょ。プログラマーなんか大変でしょ?

―― 大変ですよ、一番得意ですからね。

谷口:超得意でしょ?だから、いらなくなっちゃうわけでしょ?あと、士業の人なんか大変だよね。会計士さんとか税理士さんとか、知識が価値を生んでいたわけでしょ?一般の人が知らないことを知っていたり、その情報をいっぱい持っているから、知らない人がお金を払って教えてもらっていたけど、もうお金払わなくても教えてくれるんだもんね、AIに聞けば。もうコーチだけじゃない、誰でも大変。

じゃあ、相対的に考えて、極端な言い方をすると、人類にとって今は大転換期に僕たちは生きているってことですね。

こういう大転換期って、大きな変化の時代って過去にもあるでしょ?人類がホモサピエンスの時代から作物を作れるようになって、そこに村とか、組織とか、国ができるようになって、科学が進歩してみたいな。僕たちはいっぱい経験してきたじゃないですか。

こういう大転換期に、これを機に一歩先んじる人、リードする人がいますよね?いい方向に持っていける人と、こういう時に翻弄されるだけとか、波に飲み込まれてしまう人、もっと言ったら取り残されてしまう人って分かれる気がするんです。その違いは?なぜ分かれるのかって。若松さんどう思う?

―― やっぱり単純に、脅威は脅威、今までの仕事を脅かされるかもしれないという脅威なんですけど、それをチャンスと捉えるか否かというか、上手に付き合っていけるかどうかで差が生まれるのかなとは感じました。

谷口:だから、多分うまくいかない人は、ただ恐れるだけ、不安がるだけ、みたいな感じなんだろうね。

うまくいく人というのは、いろいろ考えたり、いろんな視点で見てみたり、フレームを変えてみたり、今までと違ったことを試してみたりできる人なんじゃないかなって気がする。正解は分からないけど。

コーチ業界における二極化 

谷口:じゃあ、コーチの世界のことを考えると、僕の考え方を言うと、申し訳ないけど、今いる「コーチです」と名乗っている人の8割くらいは、ヘタすると淘汰とまではいかないけど、今までのやり方のままだと変わらなければ大変。

なぜかって言うと、世の中が大きく変わるのに、自分が変わらなければそれは衰退するのと一緒、世の中変わるわけだからね。

パレートの法則じゃないけど、2割の人は明らかにリードして、8割の人は言葉を選ばないで言うと、遅れるとか取り残される。というふうに、申し訳ないけど、僕は二極化するんじゃないかと思う。

だから、多分プログラマーも2割はすごい高給取りになるけど8割はその逆。士業の人も2割は残って高給取りだけど、8割はAIに仕事を取られて雑用係みたいになるんじゃないかなと。

では、どういう人が残るかっていうと、本質かな、本物は残る。本質は残る、って思う。これも言葉を選ばないで言うと、なんちゃってコーチは淘汰されるみたいな。

コーチングの本質とは何か? ― ICFの定義から考える

谷口:コーチについてさっき「質問する」「考えを整理する」「振り返りを促す」って言っていたじゃない?じゃあ、「コーチングとは何ぞや?」ということですよね。

ICFでは、まず「思考を刺激する創造的なプロセスを通じて」、だから、すごくクリエイティビティが大事ってことですよね。一般的じゃなくて、すごく創造的で刺激的なプロセスを通じて、公私ともに― プライベートでも仕事でも自分の可能性を最大発揮していく。

自分が思い込んでいるリミッターを取っ払って、「俺ってこんなにすごかったの?」と思えるような生き方をしていく、コーチとクライアントのパートナーシップ、と言っているわけですよ。これが前提なわけですよね。

じゃあ、さっきのAIは「質問してくれる」「考えも整理させてくれる」「相談にも乗ってくれる」となってきている。ずっとそれだけをやっていて、AIだけに相談し続けていた人の人生は、刺激的で、超創造的で、過去の自分から想像もできないような可能性と豊かさを手にできるような人生になるだろうか?って思うわけですよ。

すごく楽だよね、AIに聞けば。考えも「そうか」「面白いな」ってなるけど、あまり刺激的で創造的で可能性が最大発揮される気にはならないんですよ。

―― 確かに。今お伺いして、「刺激的」というところが、慣れてしまいそうですね。

谷口:AIに相談するって、すごく楽ですよ。でも、自分の勇気やメンタリティはあまり鍛えられないんじゃないかな。

すごく新しいものを発明しようとしている人が、世界の第一人者と、たまたま酒を飲んでいる時に隣にいて、「え?○○さんですか?いや、嘘!」とかなって、「いや、これは嬉しいな!」と思っていたら「ちょっと君の話聞かせてよ。」「いや、実は僕こういったこと考えてるんですよね。」「君、面白いな、うちの研究所来る?」「いいんですか?」みたいな出会いの方が、ずっと刺激的だと思うんだよね?

ということは、AIはすごいですよ、質問もしてくれるし、考えも整理させてくれるし、要約やまとめもしてくれるし、振り返りもしてくれる、フィードバックもしてくれる。

でも、さっき言った「コーチングとは?」という大前提 ―― 刺激的で創造的で、自分でも驚くような自分の可能性を発揮して、今まで想像もできなかったような経験や学習、無形・有形の財産を手に入れて、とんでもない人生を歩んでいく ―― というのは、多分AIではできないと思う。

だから、AIができることは、コーチングやコーチの世界の数パーセントでしかないなって思っていて、ゼロではないけど。

 AIにできること コーチにしかできないこと 

谷口:ちなみにAIは、有効な質問もしてくれると思います、どんどんデータベースが集まるから、考えもすごく要約してくれて分かりやすくしてくれると思う。もちろんフィードバックもしてくれるかもしれないし、相談にも乗ってくれるし、アドバイスももちろんくれるでしょう。コーチとは違うから。

でも、それって本物のコーチとの関係性とは別の話なんですよね。

若松さん、よく「門前の小僧習わぬ経を読む」って言うじゃない。僕を100だとすると、「質問をする」「考えを整理する」「相談に乗る」って、何パーセントくらいの感覚ある?

―― 20%とか。

谷口:僕は3割くらいだと考えた。だから2〜3割ってことだよね。ということは、AIでできることは、本物のコーチがやっていることの2〜3割でしかないということ。

本物のコーチは、本質のコーチでしか得られないことの7割を持っている。

じゃあそれは何か?ということですよね。だから、AIでもできることしかやらないコーチは淘汰されていくでしょうね。ただ質問するだけ、話し相手になるだけ、考えをまとめるだけ、では生き残れない。

じゃあ残りの7割は何か?ということ。

さっき言ったコーチとの関係性なんですね。パートナーシップ。思考や創造的なプロセスなんです。

簡単に言うと、一回話すだけじゃないわけです。僕の一番長い方だと10年以上ずっと歩み続けているわけですね。これがプロセスでしょ?そして、その方の人生は、とてつもなく大きく変化しているんです。

だから、AIって10年付き合う?chatgpt?付き合えないと思うんだよな。その都度その都度、新しいものが出てきて、もっと優秀なものが出てきて、それにどんどん乗り換えるんだろうな。

 プロとしての5つの要素

谷口:何かというと、その人の価値なんですけど、その中に僕が「プロ論」で言っているものがあるんですよ。「プロとは専門家である。その専門領域を通じて世の中に貢献し、それによって報酬を得ている人。」

5つの丸で表しているんだけど、これを聞いている人は頭の中に描いてね。

まず、3つが重なっていて、それが「スキル・能力」と「専門知識」ですね、専門的なスキル。それと専門家が使う「ツール・道具・システム」でもいいです。これをまず3つ用意して。

料理人だってそうでしょ?お医者さんだってそうでしょ?学校の先生だってそうだし、プロサッカー選手だってそうだし。コーチもコーチのテクニック・スキルを持っている。

どういう時にどういう質問をしたり、フィードバックをしたり、どういうクライアントさんにはどういうコーチングがいいか?なぜこの質問スキルを使うのか?という知識も知っていて、人間とはどういうものか?ということも結構知っている。それに必要な質問集だったり、アセスメントだったり、フィードバックの言葉だったり、道具も持っている。

次に必要なのが、その人の「実績・経験値」ですよね。それともうひとつが「人格」。

どれが一番大事だと思う?って、よく虎プロの受講生に聞くんだけど、若松さん、その5つの丸のうちどれが一番大事だと思う?(スキル・知識・ツール・実績・人格)

―― まずは人格とかですか?

 AI時代に生き残るための2つのカギ ― 「物語」と「プレゼンス」

谷口:僕も思うわけですよ。やっぱりパートナーシップだから、誰と一緒に行きたいか、誰と結婚したいか。だから、言葉を選ばないで言うと、「3高」って言って条件だけで結婚するとあまり幸せにならないよね。

人格を無視して条件だけで選んでみたらマザコンだったみたいな。だから、条件なんて世の中が変わったときに価値があったものが全部陳腐化したりするわけですよ。

今は高学歴なんか関係ないでしょ?昔は有益だったけど。ということは、僕もやっぱりプロとして生きるために一番自分が磨かなきゃいけないのは「人格」だと。

次に、僕は「実績」だと思うんだけど、ツールやテクニックというのは備え続ける、磨き続ける、高め続けるだけなんです。

「ツール・スキル・知識」は、AIに変わる可能性がありますよね。だって、質問なんかAIがするんだもん、アセスメントだってあるし。

で、「実績」というのも、ちょっと変えた方がいいと思うんです、これからは「ストーリー」に変えたらいいと思う。その人の物語。

「人格」は僕たちは、プレゼンスと言いますね、これも変えたらいいです。「生き方」とか「生き様」に変えてみたらいい。

だから、AIに代えられないのは、AIは物語を持っていないわけです。でも、人は物語を持っているわけです。

生まれてから今日に至るまで、挫折もあるだろうし、失敗もあるだろうし、悩んだこともあるだろうし、復活したこともあるだろうし、夢もあるだろうし、もちろん恥ずかしいこともあるし、人に言えないこともあるだろうし、それが物語でしょ?

人格というのはその人の生き様や生き方や考え方、ものの捉え方。これがAIにはできなくて、これに人は惹かれると思う。

言葉を選ばないで言うと、ペラペラで、何のチャレンジもしてこなくて、薄っぺらな人生と、やりがいも生きがいも持っていなくて、とにかく食えればいいやという考え方でやっているコーチをつけたい?

―― いや、それは付けたくないですね。

谷口:それだったらAIでいいやって思うじゃん。これからのパレートの法則で2割で生き残る人は、もちろん能力・スキル・テクニックは磨いてください、それはもう大前提。

でも、生き残るために大事にしなきゃいけないのは、物語とプレゼンス ―― 自分の生き方・生き様かな。そこにまず自分の価値を見出す。やっぱり、自分自身がコーチとしてコーチをつけて、刺激的で創造的で、自分でもびっくりするような可能性を発揮しているという物語を持っていないと。

「何も変わりません、今まで通りです、自分の可能性はこんなもんだと思っています。」というコーチはつけないよな。

なので、まず自分の実績も積んでほしいと思う。そしてものの考え方、価値観、生き様、ビジョン、夢、いろんなものでそのプレゼンスを高める。

選ばれるとしたら、「コーチングを選ぶ」時代はもう終わって、「あなたとパートナーシップを組みたい、あなたをコーチにつけたい」と思えるコーチになれるかどうかかな、と僕はそんな気がします。

そのためにどうしたらいいかっていうと、まずやっぱり、今のコーチはちゃんと本物のコーチを自分のコーチに雇って、チャレンジして刺激的で創造的なプロセスにどんどん勇気を持って飛び込んで、挫折も失敗も成功も山のように積み重ねて、人としていい味が出てきて、さらに未来に対して夢や目標や目的を持って、そういった生き方をしていく。それがまず一つかなって思います。

 AIが越えられない壁 ― アクティブリスニングと潜在意識へのアクセス

谷口:最後にもう一つ、さっきのスキルで言うと、質問したり、考えを整理したり、フィードバックはAIはしてくれますけど、アクティブ・リスニングがまだできないと思う。将来できるかもしれないけど。

アクティブ・リスニングというのは、人が喋っていることだから ―― AIへのプロンプトというの? ―― 書いたりAIに喋ったり、文字化するというのは顕在化していることですよ。潜在的なことは言語化できないですよね。だって意識に上がっていないんだもん。

でも、量は山のようにあるわけです、氷山のようにあるわけです。よく氷山の絵で描くでしょ。ということはAIと喋っている内容というのは、自分の全ての中の氷山の水面の上に出ている顕在化した部分。そこでしかAIとは喋れないわけです。

人は、水面の下の潜在意識の中にいかにアクセスするかで変わる。これを促せるのがコーチのアクティブ・リスニング。これを磨くのがよいかな、能力として。

人が言っていることを聞けるし、人が言わんとしていることも聞き取れるし、うまく言えないことも推察して聞き取れるし、本人も気づかないことを聞き取って気づきを促していく。まあこういうことができる人だけが、僕は生き残っていくと思うね。

―― ありがとうございます。

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