【上達の近道】駆け出しコーチが必ずやるべきコーチング練習メニュー

最終更新日:2026年5月15日

―― 今回は「駆け出しコーチが必ずやるべき練習メニュー」というテーマで谷口コーチにお話を伺っていきたいと思います。

特に駆け出しのコーチの中には、

  • どんな練習をすれば、コーチングが早く上達するだろうか?
  • 本番セッション以外に、日常でできる良い練習方法がないだろうか?
  • 練習しているつもりなのに、あまり手応えがないなぁ・・・

など、悩みを持たれている方も多いのではないかと思います。

谷口コーチも20数年前までは、駆け出しコーチだった時期があったと思うのですが、そこから色んな方法で、コーチングのスキルやコーチとしての在り方、プレゼンスを磨いてこられたと思うんです。

そこで、20数年前の駆け出しのコーチだった谷口コーチご自身に、コーチングスキルの向上やコーチとしての在り方を磨くために、練習メニューをアドバイスをするとしたらどんなアドバイスをされますか?ぜひ教えてください。

谷口:皆さんが「コーチング練習」と言うと、コーチング・カンバセーションをコーチ同士で練習したり、実戦で、とにかく「100人コーチング」のような手法が流行った時期もありました。手当たり次第にコーチングをするというものです。

もちろんそれも良いのですが、コミュニケーションという大きな括りの中に、例えば「カンバセーション」「ダイアログ」「プレゼンテーション」「ネゴシエーション」など、ある目的に沿ったコミュニケーションにラベルが貼ってあるんですね。

そのうちの一つに「コーチング」がある。つまり、コミュニケーションという非常に大きな括りの中の、ある部分をまとめたものに「コーチング」というラベルが貼ってあるわけです。

ということは、私たちは日常生活でほとんどの時間、コミュニケーションをとっています。

そこをコーチングの練習に充てるというのが、まず一つの方法です。普段の会話から練習するということです。

ただし、コミュニケーションについても、国際コーチング連盟(ICF)のコンピテンシーの中で最初に出てくるのが「コーチのプレゼンス」、つまり存在感や影響力です。

「自分のプレゼンスを普段から高める練習をする」というのも一つの方法です。プレゼンスを高めることと、コーチングのテクニカルなスキルを練習すること、この2つが普段からできることとして挙げられ、私も実践していました。

【練習メニュー①】プレゼンス(存在感・人格)を高める

谷口:若松さんは「プレゼンス」を日本語にすると、どのような印象や意味合いで捉えていますか?

―― 「存在感」とか「影響力」。

谷口:そうだよね、存在感や影響力です。その人が存在すること、もしくは、その人が及ぼす影響のことです。影響力はプラスだけでなく、マイナスの影響力を発している人も世の中にはたくさんいます。

なので、まず自分がプラスにもマイナスにも影響力を発しているということ、自分の存在感が影響力に関わっているということを意識することが大切です。

この「プレゼンス」は、昔の言い方で言えば「人格」といってもいいのかもしれない。

「あの人はこういう人だ」「あの人は周りを明るくする」「あの人がいると周りが元気になる」「あの人は真面目だ、誠実だ」「あの人はいつもチャレンジしていて、自身の成長を常に追求している」「あの人は多くの人を惹きつけている」「世の中を良くしている」など、

周囲の人が、その人をどう定義するかが「人格」です。私はこれとプレゼンスは似た言葉だと思っています。

では、その「人格」がどう作られるか?というと、昔の人は「その人が繰り返す行動によって作られる」と言いました。

いつも時間通りに来る人なら「誠実」「真面目」「時間を守る人」と言われますが、

いつも必ず10分~30分遅れてくる人なら「時間にルーズ」「不誠実」「不真面目」と言われてしまいます。

つまり、普段から繰り返される行い、言動、習慣によって「人格」が決まるのです。

じゃあ、「習慣」は何によって決まるかというと、その人の行動や言動、言葉です。

さらにその言動や言葉は何から作られるかというと、その人の「考え」です。このようなピラミッドの構造が昔から哲学書などで語られています。

このピラミッドの一番下の土台である「思考(考え)」と「行動」を明文化したものを、昔の人は持っていました。

代表的なのが「アメリカの父」と呼ばれるベンジャミン・フランクリンって知ってる?

―― 聞いたことがあります。

谷口:彼は実業家であり、科学者であり、政治家であり、芸術家でもありました。科学者としては、嵐の時に凧を揚げて、その下に鍵がくっついていて雷が電気であることを証明した人だったと思います。

また、アメリカ「建国の父」といわれている。彼の自伝を読むと、ジャーナリストから「なぜあなたはこの限られた人生の中で、実業家、科学者、政治家、芸術家としてこれほど多くのことを成し遂げられたのですか?」と質問される場面があります。

彼は、「自分は本来怠け者だし、我欲もあるけれど、13の徳目を決めて、それに従うように生きてきたんだ」と答えています。

その13の徳目には「清潔であること」「勤勉であること」などが記されているんです。彼はその考えに従って日々行動し、一生それを続けました。カレンダーに書いてあるんです「この週は第1の徳目に、この週は第2の徳目に従う・・・」と書き込み、全部自分の考え通りに決断したり、行動ができたら、毎日○や×をつけていたそうです。

×が続くようなら行いを改めないといけない、それをただそれをずっと続けていただけだ、という話があるんですね。

ベンジャミン・フランクリンのような人格者も、繰り返す行動によって、習慣から作られ、その根底にあるのが「13の徳目」という、考えと行いを明文化したものです。

興味がある方は「ベンジャミン・フランクリン 13の徳目」で検索してみてください。

ということは、自分のプレゼンスや人格を高めるためには、自分が正しいと思う「考え」と、自分が正しいと思う「行い」を明文化し、それに沿って日々を生きる。生きるという事は、物事を考えたり、判断、決断、行動したりする時の道標とするものです。

私はこれを実践しました。だから、「信念・信条リスト」を作成しました。毎回それを見て一日を過ごすようにしました、ベンジャミン・フランクリンと同じように。

思いつきや、行き当たりばったり、その時の欲や妥協、甘えではなくて、とにかく、その考えに沿って物事を行い、言動する。と実行したのが一つ。

それを続けた結果、「谷口さんはこういう人だ」と周りから言われるようになり、それをずっとやってきて、僕は今のプレゼンスに繋がったのだと思っています。

これは日々の生活の中で誰にでもできますもんね。

―― 確かにそうですね。

谷口:だから、迷った時には「勇気の要る方を選択する」とか、「先約は優先する」とか、色々あるんです「大事なことを大事じゃないことと入れ替えない」とか、いろんなことを従っていくと、僕の「人格」が出来上がっていくんです。

こうやって日々練習する。これは毎日できるので、自分のプレゼンスを高める、これは練習としていいと思います。

人格形成を何年も続けていきますね、コーチとしてのプレゼンスを高めるっていうことですね。

【練習メニュー②】アクティブ・リスニングを日常で鍛える

谷口:次、コーチングで必要なテクニックやスキルってありますよね。若松さん、代表的なスキルやテクニックってあります?

―― 質問、アクティブ・リスニング。

谷口:ベースになるのはアクティブ・リスニング。質問っていうのは、使うチャンスがちょっと少ないかもしれない。でも、アクティブ・リスニングってどこでも使えるでしょ?

なので、練習って言うと、アクティブ・リスニングの練習を日常からやるっていうのをおすすめしますね。

それは「傾聴」じゃないんだよな。「傾聴」って人と話しているときにしかできないから。

でも、アクティブ・リスニングの訳は「アクティブ=話させる」「リスニング=聞き分ける」という意味でいったら、「聞き分ける」のは、どこでもできますよね。

―― 確かに、会話だけじゃなく、例えば、動画を見ていたり、テレビを見ていてもできそうですね。

谷口:そうそう、例えば、僕たちは「ノンバーバル」っていって、話していること以外にも様々な情報を発しているじゃないですか。そういうのを聞き分けようとすると、テレビのMCがしゃべっているじゃないですか、聞いている内容だけを聞く「傾聴」じゃなくて、「聞き分けよう」と思って聞いていたら、「あ、これ結構、時間押しているな」とか、言い方で聞き分けることできない?

―― 出来そうですね。

谷口:あと、「今、困惑しているな、この人」とか、コメンテーターがしゃべっている時も、リスニングしようと思うと、内容じゃなくて、「今、窮地に立たされているな」とか、「ちょっと困りだしたな」とか、「立場が逆転したな」とか、「今、心の中で冷や汗かいてるんじゃないの」とか、いろいろ聞こうと思ったら聞けそうじゃないですか。

ってことは、テレビを見ていても出来るし、ラジオを聞いていても「アクティブ・リスニング」の「リスニング」の練習はできるわけですよ。

「言わんとしていることは何だろう?」とか、「本当に言いたいことは何だろう?」とか、「これ本当かな?」とか、聞き分けようとしたらずっとできません?

例えば、直接じゃなくてもいいということでしょ?

僕、職業病なんだけど、デパートとかで、お客さんと販売員さんの話とか聞こえちゃうんですよ。

でも、そのままスルーするのか、無意識で練習になっちゃうんですね。「お客さんが言いたいことはそこじゃないんだけどな」とか、お客さんが言っていることと、店員さんが聞き取っていることのギャップとか聞こえる時ないですか?

例えば、スーパー銭湯とか行くと、知り合いが隣の洗い場で、いっぱいしゃべっていたりするじゃないですか、そういうの聞こえちゃうんですよね。「この人、これ建前的に言っているな」とか、「本心じゃないな」とか、リスニングだったらどこでも練習できます。半分職業病。

僕のクライアントさんで、感性を磨くのに何をやっているかというと、電車の移動中に、手すりにつかまって目を閉じるんですって、そうすると、人の声とか、動いているので、車内の色んな音にずっと集中してアンテナを立てるんです。

でも、それを意識しないとただの雑音なんだけど、ずっと目を閉じて集中して聞いていると、車内の絵が浮かんでくるんだって。

「あの辺に女性で、あの辺に年配の人で、こっちは多分サラリーマンだな」とか「ここは主婦で、ここは子連れだな」とか、車内の絵が浮かぶって言うんです。

鍛えると、結構な確率で、聞こえてきたもので思い浮かんだ絵が実際と当たるそうです。っていう位、僕たちは実は聞き分ける能力があるんです。

この「アクティブ・リスニング」の「リスニング」これ練習できますよね?

だから、朝起きてから、テレビを見ようが、街を歩く時でも、買い物をしている時も、誰かがオーダーを中華屋さんでしている時も練習できる。リスニングはこれで鍛えられます。聞き取る力、聞き分ける力ですね。

次、「アクティブ」話させる力。促すだから「傾聴」と少し違うんです。

人は話させることでいい事が起きるんです。明確になったり、気づいたり、自覚をしたり、楽になったり、モチベーションが上がったりするじゃないですか、これをコーチはやっているんです。これも普段から練習できるんですね。

例えば、物産展とか行くじゃないですか、そうすると、こだわりがあるものを生産者さんが売っていて、「お母さん、これおいしそうだね!地元のものなの?」「ああこれ~で、~で」って話し出すじゃないですか、そしたらこっちのもので、「そうなんだ、知らなかったな」とか。

「これ美味しそう、どういうところをこだわっているんですか?」とか聞くと、ばあーっとしゃべる出すでしょ?そうすると一つおまけしてくれるじゃないですか?こういう所でもできる。

あと、僕、セールスやっていたでしょ、そうすると、トップセールスマン達の色んなエピソードとかあるんですよ。あるセールスマンのルーティンが面白くて。

お客さんのお宅に行く前に八百屋とかに寄るんだって、おやじさんを気持ちよく話させて、何も買わないでお客さんの所に行く。この人無意識に「アクティブ・リスニング」の「アクティブ」をしているんですよ。

「今日いいの入ってるね、おやじさん」「これどういうふうに食べたらいいだろうね」とか「流石に知ってるね」とか話して、何も買わないでお客さんの所に行くって言っていた。意識的に練習しているんだろうね。

そうすると、レストランでも、カフェでも店員さんに話しかけて、気持ちよく話をさせるって練習できますよね?長話は迷惑かもしれないけど。

あと、よくやるのがタクシーの運転手さん。気持ちよく話をさせてもらう練習。

あと、美容院の美容師さん、気持ちよく話をしてもらって、アクティブに話させる練習をする。

そこら中でできるんですよね、なので、これは練習ができる。

でも、「質問」はそういう機会があまりないから、コーチのする質問は日常の質問と違うので、日常のコミュニケーションにコーチングの効果的な質問をいれると、ちょっと違和感があるんですよ。だから、家庭でやると大体嫌われるんです。

だから、質問よりアクティブ・リスニングとプレゼンスを高めることの方が日常で練習できます。

【練習メニュー③】I-message(アイ・メッセージ)を使う

谷口:もう一つ、フィードバックやアクノリッジに「I-message」ってあるんですよ。主語が「私」。日本語なら「私=I」を省いても伝わります。

例えば、「すごく楽しかった。」は、「私が」楽しかった、という「I-message」です。「I-message」をいろんな場面で練習するのはできます。なかなか普段やらないですしね。

お子さんいる方は、お子さんに「I-message」を送る練習ってすごいできますね。イメージ湧く?若松さん。

―― 例えば、「こうしなさい」じゃなくて、「僕はこう思ったよ」とか、「こう感じたよ」っていう練習ですね。

谷口:そうそう。例えば、買い物行きました。上の子が下の子の面倒見ていたので、お母さん、ゆっくり買い物できました。「You-message」だと「太郎ちゃん偉いね、けんちゃんの面倒見てくれて。」って言うじゃないですか。

「I-message」で全部こういうの言う練習するんですよ。何ていう?「偉いね」の代わりに。

―― 「太郎ちゃんのおかげで、パパはもう、気持ちよく買い物ができてとっても嬉しかった、ありがとう」みたいな。

谷口:そうそうそう。「助かったよ」とか「嬉しかった」とか「ちょっと感動しちゃったな」とか「誇らしく思えるよ」とか、って言うのってできるでしょ「偉いね」の代わりに。

例えば、店員さんにも、いろんなとこでサービスを受けたりとか、それこそ旅館に行ったりとか、ビジネス上もとか、とにかく全部「I-message」で返すって練習できるんです。

これも、やっぱり「I-message」が上手なコーチと、日常会話は「You-message」が多いんですね。なので、「You-message」ばかり言うコーチでは、多分、クライアントさんの満足度が違うので、この「I-message」を普段のコミュニケーションの中で練習する。

これは、練習と、効果と、もらったほうは喜ぶので、人間関係が良くなる効果と、二つあるから、この3つは出来るんじゃないかな。

【まとめ】駆け出しコーチが日常でできる3つの練習メニュー

谷口:「プレゼンス」を高めるための信念・信条に沿って日々行い、決断、選択、言動を選んでいく、ベンジャミン・フランクリンに倣う。

「アクティブ・リスニング」、「リスニング」は聞き分けるだったらどこでもできる、人の話でもできる。「アクティブ」は話させる。いろんな人と関わるときに、相手に気持ちよく話させるように促す相槌とか練習する。

「You-message」を言う時に、「I-message」に全部変えて届ける練習をする。

これは日常でできると思います。この3つ。どうだろう。

―― いや、もう素晴らしいです。すごく参考になりました、ありがとうございます。

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